夕暮れ時の帰り道。
俺が口笛を吹きながら歩くと、お前がその隣でその歌を口ずさむ。
俺がつられて歌い出すと、それはお前の楽しそうな歌声と重なった。
そうやって紡がれるふたつのメロディーは、いつの間にかスッと馴染んでひとつになった。
それがなんだか俺たちみたいで、いかにも俺たちの歌って感じがして、だから自然と頬がゆるんだ。
気持ちまでお前の優しい声に包まれているようでとても居心地が良い。
隣を見るとやっぱりお前も楽しそうに笑ってる。
その笑顔は秋の夕陽に照らされてとてもまぶしく煌めいた。

僕等を包むメロディが

「なあ。」
「んー?」
「この曲のタイトルなんだっけ?」
「んー…、忘れた。」
「そっか。結構前に流行った曲だよな?」
「うん。」
「裕次郎に教わった気がする。」
「そうだっけ?」
「うん。」
「〜♪」
「その後の歌詞なんだっけ?」
「え?…あ、思い出せない。さっきまで覚えてたのに!」
「えー。」
「なんかそうやって改めて聞かれると今まで覚えてたものも度忘れすることない?」
「あー、それは分かる。」
「…♪、…♪〜…あ!思い出した!」

そうやってまた紡ぎだされる裕次郎の優しい音色に、俺も俺の音を重ね合わせた。

今ここで俺たちがこうしていることを、ふと不思議に思う時がある。
少し前まではお互いの名前も歳も、住んでいる場所も、この世界にお互いが存在しているって事自体を知らなかった俺達が、
今となってはいつでも隣に居る事が当たり前になっている。
まるで生まれた時からずっと一緒だったみたいに、お前の事を知らなかった今までが無かったみたいに、
俺の日常の中にお前っていう存在が当たり前に馴染んでる。
実際に少し思い返してみてから、俺達が一緒に過ごした時間が
今までの人生の何分の1にも満たない短い時間であることに気がついて逆に少し驚いた。
それでも、俺のまだ始まったばかりの少ない人生経験の内のそのまた少しの時間でも、
俺はお前と居た時間や思い出達が俺の中の一番キラキラした場所に納められている事を知っている。
それはきっとこれからも変わらない。
そんなキラキラしたもの達が奏でる音色が、ふとした瞬間懐かしい思い出の詰まったオルゴールみたいに優しく心に響けば良い。

「あ。」
「ん?」
「I LOVE YOU」
「は?」
「だから、この曲のタイトルそんな感じだったでしょ?」
「あー、そんな感じだったな。」
「でしょ?」
「うん。俺はてっきり裕次郎がいきなりI LOVE YOUって言ってきたのかと思ってびっくりした。」
「ははっ、そんな事言うわけないじゃん。」
「そうかぁ?でも、裕次郎って、俺のこと好きだろ。」
「えっ!?なんで凛君がその事知ってんの?」
「え?いや、鎌かけてみただけ。」
「えー、なんだよそれ…、俺正直に答えてしまったし…馬鹿じゃん。」
「くくっ、だな。でもそうか、裕次郎は俺の事好きなんだな。」
「えー?うん。」
「ははっ、じゃあ俺も本当の事言っていい?」
「うん。」
「本当はタイトル覚えてたけど、裕次郎に言わせたかっただけ。」
「えー、なにそれ!めっちゃ遠まわし!」
「ぷはっ、だな。」
「別に普通に言ってあげるのに。」
「お、マジで?」
「うん。」
「えー、じゃあ言って。」
「凛君、好き。」
「…。」
「ああ、I LOVE YOUだから愛してる?凛君!だーいすきっ!!」
「裕次郎。…お前って、すっげー恥ずかしい奴だな。」
「「ぷっ、ぷはははっ、あははははははっ…」」

俺はこんな風にまぶしいきらきらした瞬間を、これから先もずっと忘れることは無いと思う。
たとえばこれが、こんな暖かい日々が、これからの人生の中で取るに足らないほどの一瞬の記憶になったとしても。
これからの俺たちを包むメロディーがどんなものに変わっても、このきらきらした幸せな音色だけは忘れない。


割と短いお話になりましたね。 I LOVE YOU というタイトルの歌はたくさんあると思いますが、今回は何か特定の曲をイメージしたわけではありません。
ただ本当に、甲斐君に言わせたかっただけのアレです(笑)
でもたまにすごく不思議に思うとき有りませんか?ついこないだまで知らなかった人が、今当たり前に隣に居る事が。
なんか臭いセリフですが、私にも実際に出会ったばかりなのに何でも話せちゃう、そんな親友とも呼べる人が何人か出来ました。
そんな人とは、たまに不思議だねって話になるんです。実際に知り合ったのは最近なのに、もう何年も一緒に居るみたいな。
そんな人たちに出会うと、やっぱり人生って面白いって思いますよね。
↑ポエマーモード発動してしまっているので、ジンマシンなどの症状が出た場合、速やかに出口へ向かってください。 自分でも自分が気持ち悪いです。なら載せるなよな。
最後まで読んで下さった方、ありがとうございました^^

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