この眼鏡をかければ、俺はどんな者の心も読める、聞こえる。

読心

今、俺の掛けているこの眼鏡。こいつより優れた眼鏡は他に無いと思う。
なぜなら、これは掛けているだけで他人の心の内が手にとるように分かるという特殊な眼鏡だからだ。
別に俺が誰かにそのような眼鏡を作るように言ったわけでもなく、特別それを欲していたわけでもない。
ただ、気が付いたら手元にあった。つまり、俺はこの眼鏡に選ばれたってことだ。
日常生活ではもちろん、テニスをする上でもこれほどまでに有効な能力は他に無いだろう。
だから俺はこれを常に身につけるようになった。それがたとえ海の中であっても、だ。
しかしながらそんな優れた機能をもったこいつにでも欠点はある。
それは単純にこの眼鏡がかけている間でないと能力を発揮しないということでもあるが、
他にも他人の聞きたくもない事柄や触れてほしくないであろう部分まで、
ふとした瞬間に覘いてしまうことがあるという点だ。
そのために俺は無意識のうちにそれらの事柄を区別し、外に漏らさないよう細心の注意を払うようになった。
しかし、それゆえに他人からは冷たそうだとか、何を考えているのか分からないだとか、そんな風に言われるようになった。
今となってはそんなこともさして気にならなくなったが最初のうちは気にしていたこともあった。
なにせ聞かないようにしていても読めてしまうのだ。
それからこの眼鏡にはさらに重大な欠点がある。
それは俺にも未だになぜなのは分からないのだが、
相手が同じように眼鏡の着用者だとこの能力が使えないということだ。
それは俺にとってはとても重大なことであるし、テニスをする上でその能力が使えない者が出てくるとそれだけで戦力は格段に落ちる。
現に全国の手塚戦でも彼の思考だけはどうしても読めず、強硬手段で突破しようとしたもののそれもかなわなかった。
それでも結果的に全力を尽くした結果があれだったのだし、己の実力を知る良い機会であったように思う。

話がそれてしまったが、結局のところ何が言いたかったかというと、
この眼鏡は俺にとってとても大きな戦力にはなるのだけれど、
日常生活でさほど必要な場面が出てくるわけではないということだ。
それでも毎日肌身離さずこいつを持ち歩いていれば、常に周りの者の心中はだだ漏れなわけで、
部活内においても部長という立場上周りの者のこともきちんと把握しておかなければならないのだけれど、
それにしても深くまで入り込み過ぎてしまうことも多々あるのだ。
もちろん、部員や常に一緒に居るメンバーの事を一番良く知っているのは俺だと断言できる自信はあるが、
メンバーがメンバーだけに変なことに巻き込まれることも多い。
このメンバーを集めたのは自分であるし、
この眼鏡の能力を使って勧誘すれば簡単に了承してもらえたことは言うまでもないのだが、
その時にもやはり彼らの個性の強さには驚かされた。

これはそんな彼らにかかわりながら、日々奮闘している俺の日常の物語。

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