「知念クン、何ぼーっとしてるんですか。」
「うわっ!」
((びっくりした…。))
「はは、知念クンって平古場クンのこと考えてる時大抵ぼーっとしてることが多いから脅かしがいがあるんだよね。」
「はぁ、心臓に悪い。」
「ごめんごめん。」
「…。」
((この前から思ってたけど、永四郎って本当はこうやって色んな顔するやつなんだな。))
「まあ…知念クンはもう、俺の秘密知ってるし。何も知らないフリ、する必要もないかなって。」
「…。」
((そうか、俺の前ではもう、無理しなくていいから。))
「はい、ありがとうございます。…それより、なにか悩んでいたようですね。」
「ああ、…実は。」

* * *

「ああ、あれですね。…確かに美人さんだ。」
「…やっぱり…そう思うか。」
「はい。」

海沿いを仲良く歩くカップルらしきふたり。
今回の知念クンの悩みの種である。
ひとりは平古場クンで、もうひとりは…知らない綺麗な女の人だ。
そのふたりを俺と知念クンがこそこそと影から観察している。

「あれ、仲良さそうですね。」
「…。」
((わかってるよ、とどめを刺すつもりか。))
「ま、まぁ、まだ恋人だとは決まってませんし。」
「…。」
((どう考えても俺の敗北は決定だ。))
「そうですかね。楽しそうにしてはいますけど、手とか…繋いでないですし。ほら、まだ付き合ってはいないんじゃないですか。」
「…。」
((だって凛は美人が好きだし。))
「…まあ、好みのタイプと実際好きになる人のタイプって違うじゃないですか。」
「…。」
((永四郎、無理しなくてもいいさあ。))
「あ、はは…。」
「はあ、やっぱり逆惚れ薬作るべきかなぁ。」
((たしかそれには…と…を混ぜ合わせて、それから…。))
「ちょ、知念クン。そんな物騒なもの作らないでくださいよ。」
「せめて凛の気持ちだけでもわかったらいいのに。そんな機械作れないかな。」
「…知念クン、その必要はないでしょ。着いて来て下さい。」
「え、ちょっとまて。永四郎。」
((うわ、そっちは凛達が居る方向だ。))

そうか、こういうときは平古場クンの気持ちを聞けばいい。
そう思い到って知念クンを引っ張って海辺の方へ走った。

「おや、平古場クン奇遇ですね。」
「あ?…永四郎、と…寛。」
((なんだこいつら、手なんか繋いで。))
「え?」

走っていた時に掴んだきりずっと握っていた知念クンの手を慌てて離す。
咄嗟に走って来たからしょうが無いと言えばしょうが無いかもしれないけれど、
せっかく平静を装って話し掛けたのが台無しだ。

「あれ、この人たち、凛君のお友達?」
((ふふ、なんだか手繋いで、かわいい人たちだな。))
「あ?あんたも知ってるだろ。部長の木手と、こっちが知念。」
「え?知念君ってあの?わあー、大きくなったね。お久しぶり。」
((昔から大きかったけど。ホントだ。そう言われてみれば雰囲気変わってないな。))
「(…知念クン、あの人知念クンの事知っているみたいですけど。)」
「…。」
((そんなこと言われても…誰だ、これ。こんな美人知らない。))
「知念君、お久しぶり。」
「あ、はい。」
((…思い出せん。))
「(ちょっと、頑張ってくださいよ。)」
「木手君ははじめましてだね。凛君から話はよく聞いてたから、なんか前から知ってたみたいに感じちゃうな。でも想像してたより、うんとイケメン君なのね。」
((凛君ったらこんなかっこいい人たちに囲まれてテニスしてるのか。ゴーヤー星人とか言うからもっと変な人想像してたよ。
それにしても凛君、大変そうだ。もしかしてあれ、もうばれちゃってたりするのかな。))
「…はじめまして。おふたりは、デート中ですか?」
「えー、やだなあ。そんな風に見える?」
((はは、また間違えられちゃった。凛君かっこいいから悪い気はしないんだけどね。…ということは、まだばれてはいないのね。))
「そんなわけないさあ。俺はこんなおばさん興味ない。」
「あ、言うねえ、凛君。でもそれはいくら私でも傷付くよぉ。」
「(とりあえず、カップルじゃなかったみたいですね。)」
「ああ。」
((なんか…思い出しそう。))
「え、おばさんて。そんな言い方はないんじゃないですか。こんな美人さんに向かって。」
「わ、木手君紳士だ!そうそう、言ってやってよ。私だってまだまだ若いよねえ?」
「ち、12も上だったらババァだろ。」
「え。12も上?…全然見えませんでした。」
「ほんと?うれしいなあ。これでも若づくり頑張ってるんだよぉ。」
「俺はてっきりまだ高校生くらいかと。」
「もう!うまいなあ木手君は。」
((はあ、木手君かっこいいわ。…きゃあ、だめだめ私には榊さんがいるじゃない。))
「いや、冗談ではなく…。」
「…。」
((なんだよ寛のやつ。木手が他の女としゃべってるのがそんなに嫌なのかよ。))
「もういいだろ、行くぞ姉貴。」
「!」
((そうだ。凛のお姉さん。…こんなに綺麗になってるとは思わなかった。))
「ちょっと待ってよ凛君。あ、木手君、知念君、またどこかで逢えたらお話しようね。ばいばーい。」
「…さようなら。」
「なんだ…。」
((そうか、あのひと、凛の。だって昔は…慧君にも負けないくらい食い意地はって…))
「…そうですか、そういう理由で思い出せなかったんですね。はは。でもとりあえず、彼女じゃなくてよかったですね。」
「ああ。」
((ほんと、よかったさあ。))
「あ…でも一つ知念クンに謝らなければならないことが。」
「んー?」
「平古場クン俺たちの事、なんか勘違いしているみたいです。」
「…。」


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