「あーじー…。」
「マジで暑いな…。」
「てゆーかよお、なんで俺達はこんなカップルばっかの暑苦しい場所にいるわけ?」
「凛君がかき氷食べたいって言ったからじゃん…。」
「そうか…。」
「「…。」」
「凛君、いちご味ちょっとちょーだい。」
「おお、じゃあそっちも一口。」
「うん、はい。」
「ん、うま。やっぱり夏はかき氷に限る。」
「俺は冷やしたパイナップルのがいいけど。」

俺たちは今、海の近くのベンチに座ってかき氷を食べています。
夏だけあって海には多くのカップルがごった返していて、それはもう俺たち独り身にとっては地獄も地獄、
暑さも加わってもう、だらけずにはいられない。
それでもここまで来たのは一重に凛君のご命令が下ったからなのだけど…。
家にいきなりやってきて、部屋でのんびりしている俺を見るや否や“いちごかき氷食べに行くから準備しれ”だと。
なんだってそんな偉そうに。それにいちいち従ってる俺も俺なのだけれど。
それなのに当の本人は文句をブーたら垂れているわけ。
暑いのはわかってて来たんでしょうよ。一体何がしたいの、あんたは。

「はぁ…どいつもこいつもこのクソ暑い中よくもまぁあんだけベタベタしてられんなぁ…。」
「ほんと…。」
「こいつらってよぉ、自分たち以外のもの見えてんのかなぁ?」
「んー…、んー?どういう意味?」
「だからよぉ、俺達が今ここで何してても気がつかなそうじゃね?」
「あー、確かに。」

そういえば、俺にも凛君の誘いが断れない理由があったんだった。
それは単純に凛君といると楽しいから。そんだけ。
人には何かしらの人より長けた才能があると思うんだけど、
凛君の場合それがすぐに誰も思いつかないような面白いことを考えつくことができるってことだと思う。
もちろん彼には他にも絵がうまかったりとかダンスが上手だったりとか、いろいろな才能があるんだけれど、
俺にとって一番魅力的な彼の才能がこれだった。
だからって、なんでもかんでもやってみればいいってもんじゃないことを、彼はちゃんと理解するべきだ。
俺は次に彼が言い出したことに、散々驚かされた後、ひどい目に合うことになる。


いちご味の魔法


「…お前ってさぁ、キスしたことあんの?」
「んー?うん。…って、うぇ!?な、なんで?」
「なんとなく。…ふーん、あるんか。」
「……無いことは…無いけど。」
「じゃあ試しにさぁ、今ここでキスしてみねぇ?」
「………は?…はぁ!?」
「こいつらが一人も気付かなかったら面白くね?さすがに気付いてたら変な顔すんだろ。
それにお前だって別にファーストキスってわけでもないんだろ?だったらいいじゃん。」
「え、でも…え?なんで?なんで俺が凛君とキスしなきゃいけないわけ?意味分かんない。」
「…なんだよ裕次郎…ノリ悪いなぁ。ちっ。」
「…えー、なにこれ、俺が悪いの…。」
「つか、誰だよ。」
「え?何が?」
「お前キスしたことあんだろ?」
「え?えぇ…い、いや、やっぱ無い。」
「なんだよー、ごまかしてんのバレバレだし。」
「…。」
「ほらっ、言えって。」
「……………。」
「なんだよ、そんなに恥ずかしい相手なのかよぉ。お前ってそんな女いたことあったっけか?てか彼女居たことあったか?」
「…お、女じゃない。」
「…はぁ?彼女じゃない奴とキスしたのかよ!?お前、たらしか!誰だよ、相手誰だよぉ!!言えっ!」

なんだか盛大に勘違いしてらっしゃるご様子の凛君。
正直今思い出しても嫌んなっちゃうような壮絶な俺のファーストキスの相手を、
目の前の彼は何がなんでも俺に吐かせるつもりらしい。
大体なんでそんなこと言わなきゃいけないんだ…。
かといって凛君に同じ質問をすれば彼はなんの躊躇いも無く今までの相手をつらつらと言い並べるんだろう。
だから俺は、しばらく空になったかき氷のカップの中をストローのスプーンでつついていたけれど、
粘りに粘る王様に堪忍して教えてさし上げることにした。
もう俺はどうなったって知らない。

「あのさあ、言ったって別に面白くないよ?」
「おお、いいから言えって。」
「えぇと、あの、相手は…。」
「相手は?」
「…………ひ、」
「ひ?」


「………寛。」


「………え?」
「「…。」」
「あ、えぇと?女じゃないってそういう意味、かよ…。」
「…。」
「は、ははー…。キスってよぉ、黒糖の味とか言うけど実際違うよなぁ…。」
「ん?うん、そうだなー。」
「「ははははははー。」」

ほおらね、やっぱりそうなるじゃないか。
だから言いたくなかったのに。
もうこうなったら笑うしかないのは俺も同じだった。

「…で、どうしてそうなった。」
「べ、別に俺が誘ったわけじゃないからっ!」
「そんな事は聞いてねぇ、分かってるんだそんな事は。問・題・は!そうなった経緯だよ。」
「…しらん。なんか無理やり…あー、でもあれは…。」

でもあの時、俺が余計なこと言わなければ寛もあんなふうにならなかったのかもしれない。
どっちにしろおぞましい記憶だってことにはかわりないのだけれど。

「無理やり…寛の奴…。」
「もうやめようよ…あのことは思い出したくねーよ。」
「…まあ、確かにキスしたことあったな。それならよぉ、別にいいだろ?」
「何が。」
「だから、男とキスしたことあんなら、今ここで俺とキスしたっていいはずだろ。」
「…凛君俺の話聞いてた?俺はキスにいい思い出はねーの。だからヤ・ダ!」
「ふーん。寛は良くて俺はダメってか、嫌われたもんだなあ…。」
「だ、だからあれは無理やり!」
「じゃあ俺も無理やりしよーっと。」
「は!?…ちょ、ちょっと凛君!やめれー!うわ…、ん…んっ!んンんっ!」

ゴッ

思いっきり殴ってやった。なんてことしやがるんだ、こいつ。
俺はファーストキスのみならずセカンドキスまでも男に奪われてしまった。
しかも今度は…

「っ…いってぇ…。」
「はあっ、はあっ…何すんだよっ!なんで…舌なんか…最悪やっし…。ぺっ、凛君最低…。」

ディープなやつを一発かまされました。
もう怒りと悲しみでどうしようかって思ってたところに、さらに王様は拍子抜けなことをおっしゃられた。

「…そんなに嫌かよ。」
「は?」
「俺とキスすんのがそんなに嫌かって聞いてんの!」
「何言って…当たり前だろ!なんで俺は…もう…。初めてのこと全部男に奪われて!最悪!泣きたいよ!」

最後のほうは自分でも涙声になってる自覚があったから、凛君がこれで反省することも分かった。

「…ごめん。」
「もういいけどさぁ…俺も殴ってごめん。…はい、手。」
「…。」

俺は優しいから凛君が謝ってくれば許してあげる。本当に優しい。
だけどそれだけじゃなくて、凛君には他人が簡単に彼の事を許してしまうような能力が備わっているように思う。
少なくとも、俺はその能力にやられたうちの1人だ。

「ほら、この人達もちゃんと周りが見えてたみたいだよ…みんなこっち見てる。だから早く立って、俺が悪者みたい。」
「おお。」

そうはいっても、凛君にはこんなところでこんなことをしちゃうのもおかしなことだって分かって欲しい。
凛君と居るのは楽しいんだけど、何回かに一回こうやってはずれの日がある。
とばっちりを食らうのはいつも俺なのに、凛君はそんな事お構いなしなんだ。

それはそうと、凛君って俺が思ってるより変わった思考を持った人物なのかもしれない。
だっていくら面白そうだからって、普通公衆の面前で何のためらいもなく友達と、それも男と!(ここ重要)キスなんて出来るもんじゃないだろう。
何考えてるんだろう、凛君。

俺はさっきの拍子に地面に転げ落ちた自分のカップと、
ついでに隣でズボンに付いた汚れを払っている凛君の分のカップを拾ってゴミ箱に捨てると、何処へ行くあてもなく歩き出した。
だってほら、皆見てるし。こんなとこ居づらいし。
凛君は髪長も長くて、下手するとそこいらの女の子よりきれいな顔立ちをしているかもしれないけど…さすがに女の子だとは思えないだろうし。
どう考えてもさっきの俺たちの行動は異質だから、この妙なものを見るような目でじろじろ見られても文句は言えない。自分だってそうするだろうし。
逃げるようにその場を離れる俺に、少し遅れて凛君がついて来た。
それから俺たちしばらく無言で歩いていたけれど、凛君が突然ぽつんと話し出した。

「なあ、裕次郎。」
「なに?」
「俺とキスするの、嫌だった?」
「は?またそれ?」
「…お前は、俺とキスすんのが嫌だったのか?それとも俺が男だから?」
「そんなの、両方に決まってるじゃん。なんで俺が、彼女でも無い奴とそんな事したいと思うんだよ。」
「そうか、そうだよな。」
「うん。」
「でもよかった。」
「何がだよ。」
「下手に言い訳されたり、きっぱり男だからダメだって言われたり、そんな風だったら俺は、自分が自分であることを悔やみそうだったから。」
「…なに?俺、さっきから凛君が言ってること全然理解出来ないんだけど。」
「うん、つまり俺が言いたかったことはというと、俺はこんな風にイタズラに乗じてお前とキスする方法くらいしか思い浮かばなかった。
ただ単に、素直にお前が好きだって言う勇気がなかっただけの臆病者って訳だ。」
「…え。」
「うん、結構しんどいんだなぁ、これが。臆病者だって隠し続ける事の方がよっぽど辛いって思うこともあるんだぜ。特にこうやって好きな人に否定されるような時は。」
「…。」
「当たり前だけど、だからってお前に受け入れろとは言わないから。それでもお前には俺の存在を拒んで欲しくはねーんだ。
そうなったら俺は、お前を好きになった自分を恨むことになるから。」
「…。」
「なぁこれって、わがままか?」
「…わ、わからん。そんなの俺にだって分かんないよ。」
「そっか、そうだよな、ごめん。」
「…だけど一つだけ言えるのは、俺はそんなことで凛君を拒んだりしないってこと。
むしろ、そうかって思った。それなら、嬉しいって。誰かが自分の事好きになってくれるって言うのは自分がその人に認められてるみたいで嬉しいじゃん?
それに、今俺はその喜びを知ってるから、逆に否定されることがどれだけ辛いことかも分かる。
ただ、俺は同情でもなんでもなく、まだ凛君の傍にいたい。好きとは少し違うけど、俺は凛君と一緒に居ると楽しいし、傍に居れることを嬉しく思うから。」
「そっか、ありがとう。」
「うん。」
「あのさ、今こんなこと言うと本格的に嫌われそうな気もするけど、俺のお願い聞いてくれないか?」
「なぁに?」
「これでもうあきらめるから、最後にもう一回だけキスして。」
「…え?」
「やっぱ、だめ?」
「え?」

最初の「え?」は、凛君が突拍子もないことを言い出したことに対しての疑問の声ではなくて、
これで諦めるっていう凛君のその言葉に対して自分の中に湧きでた感情に問かけた言葉だった。
今しがた自分で彼を受け入れることを拒んだはずなのに、彼のそのあきらめるって言葉に少しの喪失感と、それから絶望とを感じたから。
二回目の「え?」はそんな自分に対しての戸惑い。それはつまり、つまり…どういうことだろう。なんでこんな風に思うんだ。
もしかしたら俺も、自分が思っているよりもずっと、変わった思考をした人間なのかもしれない。

「…だったら、諦めてやんねー。」
「うん、それがいいよ。」
「は?なんだよそれ…ひっでー。」
「…あのさぁ凛君、俺のわがまま聞いて。」
「ん?」
「あのね、今から俺がもう一回凛君にキスする。だけど俺の事、諦めたりしないで?」
「え…。」

驚いたようにこっちを見た凛君の反応が、想像した通りでやけに可愛らしかった。
それはそうだよな、自分で言っててさっきと大分矛盾してるってのが分かるんだもん。
だけどさ、知っていると思うけど、今俺がこれからするのは初めての自分からのキスで、
それから初めての好きな人とのキスなんだからね、凛君。
目くらい瞑ってよ。そんな大きく見開いてないでさ。
俺は自分のそれと同じくらいの高さにある唇に、ちゅっと軽くキスをした。
緊張してあまりちゃんと触れられなかったけど、やっぱり最初の時のようにほんのりいちごの味がした。
甘い甘い恋みたいなそんな味。
きっとそうだ、俺は君に最初にキスされた時からもう、魔法をかけられいたんだ。

いちご味の魔法。


無理やり完結させた感が否めませんが…;
突発的に浮かんだよくわからないお話を、なんだかだらだらイチャコラ(?)させているだけで一向に終わりが見えなかったもので、結果こんなことに。
特に意味も何もありゃーしんせん。ただ私はもう、比嘉なら何でもいいんです。比嘉メンバーが一緒に居ればいいんです。お互いが名前を呼び合っているだけで満足です。
そして凛君がいちごかき氷をお店のおばちゃんに頼んでいる所を想像しただけでニヤケが止まらんのです。
凛君がいちごって…あの子がいちごって言うんですよ!?
ちなみに私もいちご味が一番好きだから交換は出来ないね…しょんぼり。
と、まあそんな感じのおかしなノリで書いてしまったものですが、読んで下さった方、ありがとうございました^^

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