あ、寝ぐせついてる。
そんな風に君のことを考えながら始まる毎日が、なんだかすごく幸せ。

君のうしろ。

今学期最初の席替えで、引き当てたのは窓際の3列目。
窓際の席って時点ですでに喜んでいた俺だけど、その後もっと嬉しいことが起こった。
目の前にはまぶしい金髪。そう、意中の彼がその席を引き当てたのだ。

「謙也、自分席そこなん?」
「せやで。後ろ白石か。ラッキーやんな、窓際。」
「やんなー、今年はもう席替えなくてええわ。」
「本間それ。」

これから次の学期が始まるまでずっとこの席で居られる。
そのことが俺にとってはとてもうれしかった。
え?隣の席のほうがええやんって?わかってへんな。
確かに隣の席も捨てがたいけど、後ろの席やったらいくら見つめとってもバレへんねんで。
後ろ姿限定やけど…。

それから来る日も来る日も謙也の後ろ姿を見つめ続ける俺と、
なにかあると振り返って話しかけてくる謙也。
たまに先生にばれて叱られる。
そんな感じで楽しい毎日を送っていた。

だけどそんな日々はあっと言う間に過ぎるわけで、一学期もそろそろ終わり。
このころになってくると謙也の後ろ姿だけで今日の気分なんかがわかるようになっていた。
あ、今日は鼻歌歌ってる。なんかええことあったんやな。とか、
あ、今日はなんかうつ向きぎみや、嫌なことでもあったんかな。とか。
あくびの回数が多くなれば昨日夜遅くまでゲームしてたんだっこともわかるし、
寝ぐせがついたまま学校に来れば今日は寝坊したんだなってこともわかる。
とにかくそんな彼のささいな変化に、一番に気付けることが嬉しい。
それからなにか嬉しいことがあった時、とびっきりの笑顔で君が振り向く
その姿を俺だけが見られるんだって思ったらそれだけで最高に幸せ。

だけど本当は、その笑顔を俺だけに向けてほしい。
席が後ろだからとかそんな、誰もがなれるような単純な理由じゃなくて、
そこに俺がいるから。そんなことだけで、君が笑ってくれる日が来るといい。
次にこの席に居るのが俺じゃない誰かだった時、少しでも君が寂しく思ってくれたらいい。
振り返れば俺がいる。それが君の中で当たり前になっているといい。
この思いが、少しでも君に届いたらいい。
そんな風に思ってしまう。
毎日謙也の笑った顔が見れる。それだけで十分な幸せなことなのにな。

そんな風に欲張ったせいか、
次の席替えで謙也の後ろの席に座ったのは、俺じゃない誰かだった。


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