なあ、後ろ寝ぐせついてんで。直したるからちょっと待ってや。
そんな風に君が毎朝俺のことを気にかけてくれる日が、この頃とても恋しかったりする。
君のとなり。
今学期最後の席替えで、またもや引き当ててしまった窓際の2列目。
結局今年はずっと、この席にあたりっぱなしだった。
皆がガタゴト席を移動させる中、俺だけ一人その様子をながめる。
そういえば、今年最初の席替えで白石と話した時は、
もう席替えがなくてもいいなんて言ってたっけ。
だけどこうもずっと同じ席ばかりだと、やっぱり飽きてくるってもんだ。
それに最初の席は白石が後ろにいたからそれだけで毎日楽しかった。
そんな風に思いながら窓の外に目線を向けると、隣から聞きなれた声がかけられた。
「よお謙也。自分またそこの席なん?」
「せやねん。ええかげん飽きてくるっちゅー話や。」
「やんな、ここまでくるとついてるんかついてへんのか分からんな。」
「窓際ちゅーのはええねんけどなあ。」
「そんな謙也君に朗報やで。なんと、この白石蔵ノ介様が今日から隣の席やねん!」
「お!!ホンマ?それはめっちゃ嬉しいわ。」
「…。」
「なにいきなりだまりこくってんねん。しかも顔赤いで、自分。」
「それは反則や…。」
「あ?なんて?」
「何でもない!まあ、俺が隣になったからには飽きさせはせんで〜!」
「おー、期待しとるわ。」
白石が隣の席だって聞いてとてもうれしかった。
一学期目は彼が隣にいたから、毎日飽きずに過ごせた。
それに白石は、俺の話もよく聞いてくれるから一緒に居て楽しい。
彼の飽きさせないって言葉は信用できる気がした。
なにより、彼が自分の傍に居てとびきりの笑顔で笑ってくれる。
そんな毎日が恋しかった。
だからまたそんな風にして過ごせるんだって思ったらそれだけで幸せな気分になった。
それだけで、いつもの景色が違って見えた。
最初の席替えで白石が後ろの席になったとき、隣じゃないことに少しがっかりした。
それでも後ろを振り向けばいつも白石が笑いかけてくれたし、
いつも一番に俺の変化に気付いてくれた。
だから嬉しいことがあった日は、一番に白石に報告した。
そんな時は俺よりも嬉しそうな顔をしてよかったなって言ってくれた。
そんな白石が恋しくて、愛しかった。
だから今回白石が隣になったことがとても幸せ。
だけど今年が終われば彼も、俺の隣ではないどこかにいってしまう。
彼の隣に居るのが、俺ではなくなってしまう。
だからそうなってしまう前に、彼にこの気持ちを伝えたかった。
傍に居れるこの時に、全て伝えておきたかった。
できることならずっと、俺の隣に居てほしい。
今この時に彼の笑顔が毎日見れるだけで十分幸せなことだってわかってるけど。
そんな風に思う俺はやっぱり欲張りなんだろうか。
「(謙也。)」
大嫌いな世界史の時間。そんな時気付いてくれるのはいつも白石。
先生が怖いから堂々と話すことはできないけど、
彼はメッセージを書いたノートの切れ端をこっちに渡してくる。
“世界史つまらんな”
白石も自分と同じように思ってると思うと自然と笑みがこぼれる。
それから返事を書いて紙を彼に返す。
それから彼はしばらく何か考えてから、また何か書き足して紙を渡してくる。
そんな風に繰り返すうちに、白石がこんなことを書いてきた。
“なあ、俺の秘密聞いてくれん?”
”白石の秘密?“
”おん。謙也だけに教えたい。”
“えー?なんやろ。教えて。誰にも言わんって約束する。”
白石の秘密ってなんだろう?退屈な世界史の時間が、
彼のおかげで楽しい時間に変わる。
そんな風に俺に幸せを与えてくれる白石が、
やっぱりどうしようもなく愛しかった。
白石が秘密をおしえてくれたら、そのあとで俺の秘密も教えよう。
そう決めた途端に心臓がバクバクしはじめた。
緊張しながら次のメッセージをまっていた。
だからそれを理解するのにちょっと時間がかかった。
だってそんなこと、まさかあるって思わなかったから。
こんな幸せなこと、想像もできなかった。
白石がくれた紙切れ。そこに書かれている文字を何度も読み返す。
だけどやっぱり見間違いじゃないみたいだ。
白石が教えてくれた秘密。
“謙也が好き。”
信じられないおもいで横を見ると、
そこには真っ赤になってうつ向く白石の姿があった。
だから俺の秘密も教えてあげる。
緊張した表情で俺の書いた文を読んだ白石が、
泣きそうな笑顔でこっちを見る。
“それって俺の秘密と一緒やな。俺も白石が、好き。”
だからずっと、隣に居ってもええかなぁ?
謙也目線のお話でした。
授業中のお手紙交換。懐かしいなあと思って書いてみたんですど、
男の子ってなかなかやらないですよね。交換日記とかも。
まあそれはさておき、最後まで読んでくださってありがとうございました^^