※裏要素注意※


つい先ほど、ふらりと立ち寄った本屋で永四郎に会った。
久しぶりに会った彼はまた少し魅力的になっていて、優雅で気品のある佇まいは“大人の男”を思わせた。
同性の俺が素直に格好良いと思えるくらいに色気の漂う彼の、後ろ姿を黙って見送る。
その背中が見えなくなってから、食事にでも誘えば良かったかと少し後悔した。
まぁきっと、すぐにまた何処かで会えるからその時には必ず。


紫、妖美な、誘惑


さて、今晩のおかずは何にしよう。
デパートの一階の食品売り場をブラブラ。
久しぶりに永四郎に会った事だし、丁度安くなっているからゴーヤーでも使って何か作ろうか。
じっと品定め。

「あ、知念クン。」
「…永四郎。」
「ふふっ、また会いましたね。」
「ああ。」
「今晩はゴーヤー?」
「うん。」
「俺もそうしようかと。」
「永四郎に会ったら、なんか食べたくなった。」
「ははっ、そうですか。」
「うん。」
「…。」
「…。」
「あの、…もし良かったら家に来ません?」


トン、トン、トントントントンッ…

小気味の良い音がキッチンに響き渡る。
慣れない空間で料理をする事に四苦八苦している俺の横で、慣れた手つきで包丁を扱う永四郎。
その様子はいかにも普段からマメに料理をしているといった感じで、見ていてとても安心出来た。
昔、俺達がまだ学生だった頃、家庭科の調理実習で同じ班になった裕次郎が里芋をまな板に押し付けながら削るように皮を向いているのを見て、
冷や冷やしたことがあったと思いだし、随分懐かしい記憶だと可笑しくなった。

「永四郎、慣れてるな。」
「ええ、まあ…毎日作っていれば嫌でも慣れてきます。」
「そうだなー…。」
「俺には美味しい料理を作って待っていてくれる人も居ない事ですし。」
「それは意外だ…。」
「そうですか?知念クンはどうなの?」
「俺は…俺も、毎日自分で作ってる。」
「そう、………ふふっ。」
「ん?」
「いえ、思い出し笑いです。」
「…。」
「これは随分前の話だけれど、一度甲斐クンをこの家に呼んだことがあったんです。
彼、俺が夕飯を作るって言ったら手伝うって言うので、じゃがいもの皮剥きをお願いしたんですが、どうやって剥いたと思います?…クックッ。」
「もしかしてあれか、…こう…まな板に押し付けて。」
「あ、知念クンも見たことあったんですね?はははっ。」
「うん、俺もさっきそれを思い出して笑いそうになった…くくっ。」
「この間甲斐クンに会ったら、彼にはもう誰か美味しい料理を作ってくれる人が見つかったみたいで幸せそうにしていましたよ。悔しいですね、先を越されるなんて。」
「永四郎だったら黙ってても女が放っておかないだろう。」
「まぁ、実際は良くしてくれる女性も居る事には居るんですけどね………俺、女の人ダメなんですよ。」
「えっ、………あ、ごめん。」
「いえ、それが普通の反応ですから。」
「いや、俺はそういうのに偏見はまったく無いけど…永四郎が突然言い出すから少し驚いた。」
「ああ、ごめんね。知念クンってばなんだかしゃべり易いから、ついポロッと。」
「…ああ、大丈夫。」
「さてと、これを炒めたらおしまいですね。ちゃちゃっと終わらてしまいましょうか。」
「あぁ。」

食卓に並べられた料理はどれもゴーヤーが使われていて、よくもここまでレパートリーを増やせたもんだと感心する。
永四郎にその事を言ったら、男の一人暮らしで料理は趣味みたいなものですからって笑った。

「さー、いただきます。」…いただきます」
「…ん、うまい。」
「そうですね、上出来です。」
「うん。」
「そういえば昔、平古場クンや甲斐クンはゴーヤーが苦手だって言っていましたけど、知念クンはそうでもないんですね。」
「うん、むしろ好き…、だな。あの頃はそうでもなかったけど。」
「へぇ、良いことを聞きました。」
「え?」
「いえ、こっちの話です。」
「…。」
「でもまぁ、ゴーヤーが嫌いなのなんて子供の内くらいですもんね。」
「うん。」
「…あ、おかわりあるので欲しかったら言って下さいね。」
「ん…じゃあ米、もう少し貰ってもいいか。」
「ええ、どうぞどうぞ。」
「ありがとう。」
「それはそうと、知念クンも良く食べるようになりましたね。」
「そうか?」
「ほら、昔はあんなにホッソリと痩せてたじゃない。俺すごく心配してたんですよ。」
「ん…、あの時から食べる量は変わってないんだけどな。」
「え、そうなんですか?俺はてっきり知念クンは食が細いのだとばかり思っていました。」
「そんなことはないぞ。たぶん、あれは部活が厳しかった所為。」
「あぁ…、確かにそれはあるかもしれませんね。」
「きつい時は、本当にきつくて…よく吐いたりもしてたし。」
「…。」
「それに皆と同じ量食べてても、俺は縦に長い分そっちに栄養全部取られてたから。」
「そうですね…俺は田仁志クンがあの身長で毎日あれだけの運動をしていてあんなに育つ事が不思議でなりませんでしたけど。」
「あぁ…そうだな、くくっ…慧くんは、すごい。」
「毎日あれだけの量を食べていて彼の家の食費は大丈夫だったんでしょうか…あそこは兄弟も多いでしょう。」
「くっくっく…親も大変だなぁ。」
「ふふっ…。」
「あ、これ最後…食べても良いか?」
「ええ、どうぞ遠慮しないで。」
「ん、これ結構気に入った、うまい。」
「そうですか、良かったです。」
「うん、帰りに作り方教えて欲しい。」
「ええ、いいですよ。」
「ふぅ…美味かった、ごちそうさま。」
「はい、ごちそうさまでした。」
「これ…。」
「あぁ、そのままで良いですよ。俺が後で洗いますので。」
「いや、今やってしまった方が後で楽だ。洗ってしまおう。」
「すみませんね、じゃあ手伝ってもらえますか。」
「うん。」

決して狭い訳ではない永四郎の家の台所も、平均より大きい男がふたり並ぶとやけに窮屈に感じる。
距離が近いという事はそれだけお互いの様子が良く見えるということでもあって、
そういえば昔は永四郎の手が好きで、しゃべるときは手ばっかり見ていたなぁ、なんてことを食器についた泡を洗い流す永四郎の手元を見て思い出した。

「そういえば。」
「ん?」
「知念クンの手って綺麗ですよね。」
「え、そうか…?」
「俺、知念クンの手が好きで、中学の頃は君の手ばっかりを見ていた気がします。」
「…。」
「いや、だからといって変なことは考えていませんよ?ただ単純に形が綺麗だって思っていただけで。」
「別に疑ってないぞ…。」
「それなら良いんですけど。」
「…俺も、見てた。」
「何をです?」
「永四郎の手が、綺麗だって。」
「あぁ…、ふふっ、じゃあお互いに手ばっかりを見ていたから、相手に見られていることに気が付いていなかったって訳ですね。」
「そうらしいな、くくっ。」
「さて、これで全部ですね。」
「うん。」
「…そうだ、知念クンって飲めますっけ。」
「あぁ、うん。」
「じゃあ飲みましょう。」
「うん。」

永四郎はそう言って良く冷えたビールを冷蔵庫から2本取り出してきた。
酒は、強い方だと自負している。
甘いものも好きだけれど、酒に関しても辛党とまではいかずとも、ザルだとはよく言われていた。
だから永四郎が差し出してきた缶をありがたく受けとってお礼を言う。

「そういえば…、今日って6月29日ですよね?」
「うん。」
「6月29日…6月29日…なんだかさっきから大切な事を忘れている気がするんですけど、思い出せないんですよね。絶対に何かあったはずなんだけど。」
「…。」
「………ねぇ、知念クンのお誕生日っていつだったっけ。」
「6月の29。」
「今日は何日?」
「6月の29。」
「っ、嘘でしょう?それって今日じゃないですか!なんでもっと早く言わないんです。」
「…俺が久しぶりに会った友達に、わざわざ“今日俺の誕生日だぜー”なんて言うと思うか。」
「言いませんね…言いませんけど!もうっ、俺の馬鹿…何でもっと早く気が付かなかったの…本当に、何も出来なくてごめんね。」
「いや、美味いもの沢山食べさせてもらって、久しぶりに色々話も出来たし、俺は十分満足だ。」
「そう言ってくれると助かるけど…、今日は予定とか無かったの?」
「うーん………、あっ。」
「何!?」
「朝凛が持ってきたケーキを楽しみにはしていた。」
「…なんだ、びっくりした。」
「くくっ、もうこの歳になって恋人も居ないとなると、結局はひとりぼっちで過ごす事になるんだ…だから、今日は永四郎が居てくれて嬉しい。」
「そっか、…遅くなったけどお誕生日おめでとう。」
「ありがとう。」
「ねぇ、折角だからこれあけちゃおう。」
「いいのか?そんな高そうなの。」
「うん、こういう時の為にとって置いたの。」
「…そうか、悪いな。」
「いいえ。」

永四郎があけちゃおうと棚から取り出したのは、いかにも高そうな泡盛。
自分の誕生日ごときでそんなものをあけてしまっても良いのかとも思ったけれど、永四郎が良いというならいいか。

「ん…匂いから、違うな。」
「そうですね、…じゃあ、乾杯。」
「乾杯。」
「…はぁ、良いですね。」
「うん、…うん……うまい。」
「…甲斐クンてば、随分上等なものを寄越しましたね。」
「裕次郎か、やっぱり。」
「ええ、彼は身内には尽くすタイプですから…ははっ。」
「くくっ、でも本当に、上等だ。」
「うん。」
「…永四郎は、酒強そうだな。」
「そう見えるでしょう?…それが案外そうでもないんですよ。」
「へぇ、意外だ。」
「下戸ってほどでもないんですけど、わりとすぐに酔ってしまうので普段はなるべく気を付けるようにはしています。」
「へぇ…。」
「俺の場合、見た目には特に変化はおきないんですけど、突然変なことを口走っちゃったりするので困ります。
暴れたり怒ったり泣いたりって事がない分良いじゃないかとは言われるんですけどね。」
「そうか…。」
「知念クンは?」
「俺はザルだってよく言われる。」
「うん、いかにも強そうですもんね…。」
「そうか?」
「ええ。」
「親が強いから、遺伝か。」
「へぇ…、知念クンのお母さんってあの可愛らしい感じの方ですよね、まったくお酒が強そうには見えませんでしたけど。」
「皆それは言うけど、あの人はもう…酒豪としか言いようがない。」
「くくっ、なんだかおもしろいね。俺とは正反対だ。」
「うん。」
「あっ…知念クン、明日はお仕事?」
「いや、休み。」
「そっか、じゃあまだゆっくりして行けますね。」
「あぁ…、永四郎の方に用があるなら早めに帰った方が良いよな。」
「いえいえ、俺も明日は休みだし、知念クンなら全然何時まで居てくれても構わないですよ、なんなら泊まって頂いても結構ですし、本当に。」
「…そうか、ありがとう。」
「実は俺、今すごく楽しんでいるんです。」
「…くくっ、俺もだ。」
「本当ですか、それは嬉しいですね。」
「家に帰ってもケーキが待ってるだけだしな、さみしい…くくっ。」
「ここに居ればさみしい思いなんてなせませんよ、俺が。」
「うん、ありがとう。」

良く考えれば永四郎はすでに多少酔がまわっていそうな雰囲気を醸し出しては居たのだけれど、
まさかこんなに早く酔ってしまうなんて思わない俺はさっきの言葉通り見た目には何も変化の起こらない永四郎と共に次々に杯をあけていった。

「…知念クン、注ぐ?」
「ん、あぁ…、ありがとう。」
「…あ、そうだ。」
「ん?」
「知念クンに特別、俺のずっと秘密だったことを教えてあげようかな。」
「うん。」
「俺ね、実は知念クンの事、ずっと好きだったんだ。」
「へぇ……………、っ!?」
「好きだったって言うか、今も好きだって感じたんだけど。」
「…。」
「ふふっ、驚いた?」
「うん、すごく。」
「これで俺の秘密はおしまい。」
「……………あ、ありがとうございました…、た、誕生日プレゼントに良いものを頂きました。」
「ふふっ、何言ってるの…、そんなに構えなくてもね、いいでしょ。」
「…。」
「何もしないから。」
「…あ、あぁ。」
「知念クンが嫌だと思うことはね。」
「…。」
「…知念クーン、知念クンてば本当、良い男だと思う。」
「うっ、うん、ありがとう。」

正直なところ、ほぼ素面の状態でそんな重大事項を暴露されて、どう反応して良いやら分からない。
酒の勢いで有ること無いこと口走ってしまっているんじゃないかとも思ったけれど、
このまま放っておけば更に酷い状態にも成り得るんじゃないかと、急に焦りが募りだす。

「…どこをとっても俺のタイプにピッタリくるんですよね。」
「…え、永四郎、酔ってるのか?…酔ってるな、…水飲んだらどうだ?」
「いいえ、要りませんよ。」
「…いや、水飲んだ方がいいと思うぞ。」
「嫌だよ、俺今すごく良い気分なんです。」
「ん、でもなぁ…俺は水を飲む事をおすすめするぞ。」
「なんでです?俺はむしろもう少し飲んでいたい気分です。」
「…それは、やめておけ。」
「折角知念クンが居るんだからさ、気持ちよく飲みたいよ。君が隣に要るってだけでお酒が何倍も美味しくなるんだから。」
「…。」
「知念クンは、俺の事どう思ってます?」
「ん、どうって?…普通に、格好いいなぁとか、尊敬するなぁとか…。」
「ふふっ、そうなんだ、…じゃあ、俺とどう?」
「…な、なんの話。」
「俺と寝ろって言われたら、寝られる?」
「………いや、ちょっと、永四郎、お前本当に大丈夫なのか?なんかおかしいぞ。眠いのか、…そうなんだろう。」
「眠くなんかありません、むしろ知念クンを寝かさないくらいヨクする自身はありますよ。」
「…うっ、…お前本当にここら辺でやめといた方が良いぞ…正気に戻ったときが辛いだろ。」
「なんでですか、酔ってようが酔ってなかろうが、知念クンの事が好きだという事には変わりはないでしょう。
朝起きて、何も無かった方がずっと寂しくて辛いですよ。…ヤった後悔よりヤらなかった後悔って言うでしょ。」
「…それは使いどころがおかしいと思うぞ…というよりなんかおかしかったぞ、全体的に。」
「そんな事は気にしないで下さいな。」
「…。」
「…ね、ダメですか?」
「うっ…永四郎、さっき俺の嫌がることはしないって言った。」
「…そう、知念クンは嫌なんですね、俺となんて。」
「…いや、嫌という訳ではないけど…おかしいだろう?」
「おかしい?…そんな考えは払拭させてあげますよ。」
「いやいや、いいです、いらないです。」
「…じゃあせめて、チャンスくらいは貰えないですか。」
「チャンス?」
「…今から俺が知念クンのを口でしますから、それで気持ちよくならなかったら諦めます。」
「…な、何言って…そんなことやめた方が良いって、なぁ、永四郎!?」

そうやって抵抗する俺にかまわず、永四郎は俺のベルトに手をかけてカチャカチャとはずし出した。
はい、と永四郎がさっきまで持っていたグラスを渡されて両手が塞がっている内に、ズボンがどんどん脱がされていく。
慌ててふたつのグラスをどこか適当な場所に避難させてから永四郎を身体から剥がそうとしたものの、
目にも留まらぬ早さで行動する永四郎に追いつかず、さらに酔っているはずなのに驚くくらい力が強くて、
必死にズボンを引き上げようとしたものの結局は間に合わなかった。

「………すごいね、知念クンの大きい。」
「うわっ、本当結構ですからっ、…離してっ。」
「…。」
「え、永四郎、…なぁっ。」
「動かないで下さい、歯が当たると痛いですよ?」
「へっ…、ちょっ、本当にそれはっ……おい、えいしろっ、ん…。」
「…もう抵抗しても無駄ですからね。」
「…うそだろ……何してんだ……………。」
「すみません、後悔は後にまわしてもらえませんか。一度試してみてからダメだった場合にだけ、してください。…絶対に後悔はさせませんけどね。」
「………ひゅっ、……んっ………………。」
「………………。」
「…っ、…………………。」
「………………気持ち悪い?」
「……っ、…はっ……………………っんー……。」
「………、……良かった、勃ってきた。」

そんな事は、最初から分かっていたのだ。
どんなに抵抗しようと、そんな風にされたら結局は反応してしまう。
だからそうなる前に必死に止めさせようとしたのに、もう手遅れだ、と自分でも思った。
ただ、最後の抵抗とばかりに込み上げてくる声を無理やり押し殺す。
それでも、奥歯をかみ締めているにも関わらず喉から漏れ出る呻くような自分の声に、舌打ちしたい気分でいっぱいになった。
声を出したら負けだと、そんな風に思って耐えているのに。
ここで俺が声を上げてしまったら本当にそこで終わりだと思ったし、 実際にここまで必死に我慢をしていて声が出てしまうくらいならば、素直に負けを認めて永四郎を受け入れようとは思っている。
でも、だからこそまだ諦めては居ない。俺は必死に耐える。

「………ちねんくん、…っ、…きもちよくないですか?」
「…………んくっ、………………っ、……。」
「おれ、……ちねんくんのこえが、………はっ、…ききたかったんですけどね…。」
「……………っん、……ふーっ…、ふーっ…、……はっ。」
「……ん、…………だめですか?」

永四郎に俺のものを咥えた状態でしゃべるなと言いたかったけれど、
それをしたら声が出てしまうし、わざとやっているんだとしたらそれこそ永四郎の思うつぼだ。
正直な話、俺がここまで必死になっているという事はつまり、それほどイイというわけで、
久しぶりに他人に触られている所為も多少はあるかも知れないけれど、それを抜きにしても永四郎は上手かった。
永四郎自身も男であるために何処をどうすれば気持ちよくなるのかが手に取るように分かるのだと思う。
…だからやはり、そんな相手には適うはずが無かった。

「ちねんくん……、……ふっ…………んっ……。」
「……っ、…………ん……、ぁっ!?………んあぁっ……、永四郎っ!」
「…やっときけた…………ふふっ、………なまえもよんでくれた。」
「っ!………〜っ、…っ……………。」

思い切り吸い付かれて、いとも簡単に声が出た。
あまりに驚いて、咄嗟に口元を手で押さえるも時すでに遅し。
永四郎にもばっちり聞かれてしまっているし、自分でも押さえが利かないことは良く分かった。
これではもう、潔く永四郎を受け入れる覚悟をする他にない。
俺は声を抑えることを止めて、永四郎の頭と肩に手を置き、そのまま与えられる快楽を受け入ることにした。

「……ん、ふっ……永四郎…………。」
「…ち、ねんくん………?」
「永四郎…、気持ち良いっ………俺の負だ…。」
「…っ、………………ほんとうですか…。」
「んー、ホントッ……はっ、………ぁ……だから俺は、永四郎とシても良いぞ…。」
「……………。」
「でもその代わり…、俺は男とはやった事ないし、どうすればいいか分かない。」
「………はい、それはもう…知念クンは何もせずとも大丈夫です。」
「そうか、だったら良いけど…。」
「………………すみません知念クン…、このまま最後までしてしまってもいいですか…?」
「…え?」
「……………俺もう…、我慢出来そうに無いんです。」
「……………………永四郎…。」
「…ごめんなさい…………、っ………。」

そう言って謝りながら自らズボンを脱ぎだした永四郎のものも、確かに硬くなっているのがこちらからでも分かった。
永四郎はベッドの引き出しからローションを取り出して、それからゴムも一緒に掴んで俺の右手に握らせると、
自分は下着をずらして後ろを溶かし始めている。
なんだかもう、その姿が信じられないくらい妖艶で、思わずじっと見入ってしまった。
永四郎は男なのに、とか、あの永四郎がこんな顔をするなんて、とか、考えても考えてもやっぱり目の前の人物は魅惑的で、
彼の口から漏れるなまめかしい声に、激しく情欲をかき立てられた。

「…ち、ねんくん…いいですか?」

突然かけられた声に反応する前に、永四郎が俺のほぼ穿きっぱなしのズボンと下着に手をかけて太ももの半分までずらす。
永四郎は俺の両足を跨いで、息を深くついってから徐々に腰を下ろしていった。

「…ん、………あ、……はぁ…知念クン…。」

眉根を寄せながら最後まで腰を沈めてから、永四郎が俺の目を見つめてふっと笑った。
それから、耳元に唇を寄せて気持ちいいですって囁いて、ゆっくりと動き出す。

「…ん、ん…はぁっ……は、ぁ………知念クン…。」
「…………んっ、…………っ、は、…。」
「ぁ、あっ……はぁ、んっ………んんっ…。」
「はぁっ……、はっ………、はっ、……は…。」
「……ん、んんっ、ふっ、あっ…知念クン、…ち、ねんく…っん…はぁっ。」
「…はっ、…はっ、…は、えいしろっ…。」
「……んっ、…っ!?…ち、ねんくん…?」

自ら腰を揺らす永四郎の艶美な姿に耐え切れなくなって、思わず前に体重を思い切りかけて押し倒す。
そんな俺の様子に、永四郎は驚いて一瞬肩をビクリと跳ねさせた。
すぐ後ろにはベッドがあるのに、そこに移動することさえも煩わしく感じる。
フローリングの床では背中も痛いだろうに、そんな事を気にさせる風も無く両腕を首に回してくる永四郎を夢中になって抱いている自分が居た。

「あ、ぁ、あぁっ…、はぁーっ、あぁっ…んっ、ん、ふっ…。」
「…はぁっ、……はっ、はぁっ、…はっ、は……っ。」
「あっ、あぁはっ、…はぁんっ、んっ、んっ、…ちねん、くんっ…。」
「はっ、……はっ、はっ、…は、はっ、はぁっ…。」
「ん、んんっ、…はぁ、あっ、あぁっ、…ふぅん…はっ、ひぁっんっ…。」

確かに、後悔はさせないと言い切るだけの事はあると思った。
こんなにも夢中になってしまうくらいに、永四郎はすごい。
気が付いたら俺は、男だからとかそんな事どうでもよくなっていて、
ただ、永四郎という人物にのめり込んでいくのが分かった。

「はっ、はぁっ…、はっ、はっ、はっ…、えいしろっ…、ぅっ…。」
「はぁっん、ん、んやぁっ、あぁはっ、あっ、んっ、ちねんくんっ…もっ、はぁっ。」
「はっ、はっ、はぁっ…はっ、はっ、は、ぅ、はっ…はっ。」
「あっ、あぁぁっ、あ、あ、っ…ぁ、んんっん、んあっ、あぁ、あっ…ち、ねんくっ!」
「はぁー、はっ、はっ、…は、は、は…っんく、…はぁーっ…。」
永四郎が俺の名前を呼びながら達した瞬間、中がより一層きつく締まって、
耐え切れずにきつく目を瞑ると、全身から熱が湧き上がるような快楽に包まれた。
その波が去ってからしばらく目を開けると、目の前の永四郎の瞳に涙がじわっと溢れたのが見えた。

「………っ、…。」
「…ふっ…ぅっ、…………うっ…。」
「……ご、めん……永四郎。」
「…ち、がうんですっ…謝らないで下さい…ひっ、く…。」
「……………どうした?」
「…ぅっ、………知念クン、…俺、知念クンのことが好きなんですっ…、好きです。」
「………うん。」
「…それなのにっ、もうっ、会えないでしょうっ…こんな事になったから、会ってくれなく、なって、…ひっ、俺はっ…。」
「…………………………永四郎。」
「…今だけでもっ、今の内にっ…知念クンがこんなに近くに、居てくれる内に全部伝えておかないとって、
…でもっ、ごめんなさいっ、泣いたりなんかしてっ、…っ、…無理やり、こんなっ…。」
「…………………。」
「…でも、好きですっ…好きなんです、知念クン、…好、きっ…、……んっ…ふ…。」
「…はぁっ…永四郎、………泣かなくても良い、…泣くな。」
「………。」
「俺は確かに、永四郎に言われた通り後悔なんて全然して無い。永四郎を受け入れたのは俺だし、途中から俺の方が夢中になっていたくらいだし…。
だからこんな風な事になったからって俺は永四郎を拒絶したりなんてしないし、永四郎が会いたい時に会いたいって言ってくれればすぐに会いに来る。
…つまり何が言いたいかと言うと…俺はまだ、永四郎と縁を切るのは嫌だって事だ。」
「…。」
「永四郎がもう、俺の顔なんて見たくないって思う時が来たとして、それが俺達が本当に会えなくなる時だ。」
「…知念クン。」
「って、こんな恰好で何言ってるんだかな…。」
「…んぅっ、待って、下さい…お願い。」
「…。」

行為が終わった後の体制のまま、長らくしゃべっていた事に気が付いて身を起そうとすると、太ももの間で腰を力強く挟まれて身動きが取れなくなった。

「もう少しだけ…抱きしめていて貰って良いですか。」
「…。」
「これが最初で最後だと思ったら、なんだか名残り惜しくなってしまって…すみません。」
「…。」
「すみません…。」

永四郎は切ない声でそんな風にいって、すぅっと鼻から深く息を吸い込んだ。
首にまわされていた両腕の内片方は俺の後ろ髪を優しく撫で、もう片方は背中へと降ろされる。
なんだかそれが、とても心地よくて、至極わがままな考えが浮かんでしまった。
俺じゃない他の誰かの腕の中、こうやって永四郎が抱かれる姿を想像したくないなんて。

「知念クン、ごめんなさい…ありがとうございました。」
「…。」
「知念クン?」
「…永四郎。」
「…はい。」
「今更凄くわがままな事、言っても良いか。」
「…なんですか。」
「俺、永四郎が他の人の事を見るのは嫌かもしれない。」
「…え?」
「だから、永四郎がずっと、俺の隣に居てくれるようになったら嬉しい。」
「それは…。」
「ダメ、か…?」
「…ダメなんかじゃ、無いですよ。俺も…俺は、ずっと前からそんな風になることを、願っていたんですから。」
「…永四郎。」
「知念クン、お誕生日おめでとうございます…それから、来年も再来年も、そのまた次の誕生日にも、こんな風に君にお祝いの言葉を言わせて下さい。」
「…うん、約束。」




無理やり終わらせてごめんなさい…。


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