「好き。」
そんなありきたりな言葉でも、そこに込められた想いが君に届いた時。
君が世界一幸せって顔で綺麗に笑うから。
だから俺は、君以外何も見えなくなってしまうんだ。

好き

「白石。」
「ん?」
「今日は、電車で何処かいこうか。」
「何処かってどこ?」
「どこでも。適当に電車に乗って、適当なところで降りる。」
「おお、なんかおもしろそうやな。」
「よかろ?」
「おん。」

白石と久しぶりに出掛ける休日。
特に何をする計画を立てて待ち合わせをしたわけではなかった。
普段なら何処かその辺の街やらをぷらぷらするのだけど、
今日はなんとなく、何処か知らないところへ行ってみたくなった。
白石と二人で。
まだ見たこともない素敵な場所を、白石と2人で見つけられたらいいと思ったから。
俺たちはカードで改札をくぐると、一番最初に来た電車に乗って外の景色が見える窓際に並んだ。

「あ、千歳。俺ここで降りてみたい。」
「うん、じゃあ行こう。」

しばらくするとやっぱり俺たちの見たことにない景色が見えてきた。
どんなに住み慣れた場所も、知り尽くした街だって。
どこか知らない、行ったこともないような、新しい場所に繋がってる。
白石が降りようと言った駅は、少し前までの都会の騒がしさが嘘みたいに、
ゆったりとした時間が流れるどこか懐かしい雰囲気のある場所だった。

「なぁ、なんかしらんけど、ちょっと懐かしい感じせーへん?」
「うん、俺もそう思っとったところばい。」
「ほんま?」
「うん。」
「熊本って、こんな感じなん?」
「んー、田舎の方に行けばこんな感じかもしれんばってん、俺が住んどったところはもう少し賑やかだったばい。」
「ふーん。なぁ、いつか一緒に行ってもええかな?」
「どこに?」
「千歳がおった場所。そんで今日みたいに適当な電車に乗って適当な場所で降りるんや。
 千歳が居った場所の、千歳も見たことのないような場所で、2人でこうしてぼけーっと。
 その時も初めて来たはずの場所やのにこんな風に懐かしいって思ったらおもろいと思わん?」
「そうやね。」

白石が楽しそうに俺と居る未来の話をする。
これからも彼の隣に居るのは俺だけだって言われてるみたいで嬉しい。

「白石。」
「ん?」
「好いとーよ。ずっと。」
「なんや、いきなり。」
「んー?なんか、急に言いたくなったと。」
「ふーん。まぁ、なんや。それ、俺しか要らないって言われてるみたいでええな。」
「ん?」
「ほら、ずっとって事はこの先俺だけが千歳の隣に居れるっちゅーことやろ?」
「そうやね。」
「やから、ええなぁって。この先ずっと、千歳だけのものになるのも。」

そう言って急に早足になりだした白石の手を掴んで、彼の指を自分の指と絡めてぎゅっと握る。

「千歳、ここ外やで。誰かに見られる。」
「よかろうもん。」
「よ、よかって。」
「話したこともないような誰かに見られて変に思われるより、
こうやって白石と手を繋いで歩けないほうが嫌やけん。」
「…あんな、ようそんな恥ずかしいこと…ああ、もうええわなんでも。」
「くくくっ。」
「なんやねんもう。」
「俺は白石しか見えんけん、他の人の事はどうでもいいと。」
「な。」
「他の人にどう思われようと、白石が俺ん事好いててくれれば。
俺が白石の事好きって言った時、白石がほんなごつ嬉しそうに笑うから、俺はそれだけで幸せばい。」
「…千歳。」
「ん?」
「…呼んでみただけ。」
「白石。」
「ん?」
「好いとーばい。」

やっぱり君は幸せそうな顔で綺麗に笑った。

白石は恥ずかしがり屋さんだから好きなんてめったに言わないけれど、
その笑顔は世界中のどんな言葉より好きって想いがこもっていて。
だから俺は、君しか要らないって思えるんだ。
好きって言葉を伝えた時、それを聞いて喜んでくれる人がいる。
それってすごく幸せなことやろ?


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