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From:えーしろー
件名:無題
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甲斐クンお誕生日おめでとう。
今年もまた、こうして君の誕生日を
祝える事をとても嬉しく思います。
この一年も君がいつでも笑って
過ごせることを祈っています。
それでは今日という特別な日を
楽しんでください。
PS
あとでお家に窺わせてもらいます。
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8月27日0時ちょうど。
永四郎から誕生日のお祝いメールが届いた。
案外律儀な奴なのだ、永四郎という男は。
なんとなく永四郎が今日この日の0時ちょうどになる瞬間を今か今かと待っている、
そんな場面を思い浮かべて可笑しくなった。
それから、同時にどうしようもない愛しさが込み上げて来て、
今すぐにでも永四郎に会いに行きたい衝動にかられる。
文末に書いてある、あとで窺うって言うのは一体いつの事だろう。
俺は後何時間愛しい人の笑顔を待たなければいけないんだろう。
そう考えだしたら、なんだかうずうずしてきた。
どうしようか、こんな夜遅くに押し掛けたら変に思われるだろうな。
だけど俺の中ではそんなこと、もうすでにどうでも良くなってたり。
今日という特別な日に、一番に祝ってもらいたかったのは永四郎で、一番に会いたいのも彼だから。
そうと決まったら一目散に外へ駆け出て、自転車で全力疾走。
驚かせたらごめんね、だけど今日は俺の特別な日。だから笑って許してね。
太陽が生まれた日
今日は甲斐クンの誕生日。
今日といってもまだ5分も経っていないけれど、俺は俺の大切な人の生まれた日を、
最初の一秒から最後の一秒までずっと祝っていてあげたかった。
だから今日が始まった瞬間に、彼へのメッセージを言葉にのせて送った。
本当は電話でも良かったのだけれど、そうなるとなんとなく
今日一番に彼の笑顔を見るのが俺でないと気が済まなくなってしまいそうだから、諦めてメールにしておく。
これは本当に残念なことだけれど、きっと今日一番に彼におめでとうって言えるのは
甲斐クンをこの世に生んでくれた彼のお母さんだとか、家族だとか、
そんな、常に身近にいる彼にとってとても大切な人たちなんだろうから、
俺は今日一番に彼の笑顔を見ることは出来ない。
それでもせめて、今日という日を一番に祝ってあげられるのが俺であったら。
そう思っての事だったんだけど、ちゃんと俺の気持ちは届いたかなぁ?
思えば甲斐クンは小さい頃からずっとあんな調子で、誰にでもわけ隔てなく接する太陽みたいな子だった。
俺たちが初めて出会った日の事は良く覚えていない。
けれど、きっと彼はその時からあんな風に誰よりも強い光を放って輝いていたんだと思う。
そうじゃなきゃ、彼の周りに居る人達さえも輝かせるなんてことは出来ない。
君が笑えば、その光を反射したみたいに皆が笑う。
君が泣いたら…
「裕次郎クン、笑って。」
俺は絶対に君が泣いてる顔を見たくなかった。
そんな時の俺のセリフは決まっていて、そして俺がそれを口にした時の君の笑顔も決まって輝いてた。
決して無理した笑顔じゃない、本物の笑顔をいつも見せてくれていた。
太陽の光が生み出したたくさんの輝きが、所狭しとちりばめられた夜の空を、
そんな懐かしい日々を思い出しながら見上げていた。
〜♪〜
そこにメールを受信した事を知らせるメロディ。
それは確認するまでも無く甲斐クンからのものだ。
さっそく受信ボックスを開いて内容を確認する。
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From:裕次郎
件名:おーい
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開けて。
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…開けて?何を?
開ける?ドア…フタ…窓…まど?
はっとして窓を開けて外を確認する。
まさかこんな夜にそんな事起こるわけがないって思ったけれど、そのまさかだった。
甲斐クンが、窓から見下ろした所に甲斐クンが居る。
「…なんで。」
「へへ、会いたくなってきっちゃった。」
「…。」
慌てて部屋を抜け出して、急いで甲斐クンのもとへと駆けつけた。
「やーっぱ迷惑だよなぁ、こんな遅くに。わっさん。」
「いや、俺も会いたかったから、…大丈夫。」
「じゅんに?よかったぁ。」
「うん。あ、とぅーしびーかりゆし、裕次郎。」
「…うん、にふぇー!!」
「あの、上がって。」
「え、いいの?」
「うん、もちろん。わざわざこんな時間に会いに来てくれたんだから、いいに決まってる。」
「えー、ラッキーやっし。来たかいがあったさぁ。」
「いっそのこと泊っちゃえばいいのに。」
「え…。」
「え?」
「そうしたい。」
「あ、え?うん、こちらは歓迎だけど。でもおばさんとか、がっくりするよ。朝君が居なかったら。」
「そっかぁ、それならしょうがねーらん。でもまあ、今日一番最初におめでとうって言ってもらえたのが永四郎で良かったさぁ。」
「うん。俺も一番に言えてよかったよ。」
「そっか。じゃあもう一つ、永四郎に俺に一番にプレゼントをくれる権利を与えよう。」
「…なにそれ。後で会いに行く意味がなくなるでしょう。」
「別になにも無くても会いに来てくれるだけで良いのに。…でもまあ永四郎がそう言うなら、
ちゅーしてくれるってのでもいいけど。それなら無くならんしいいあんに?」
「しょうがないなぁ。でもそれ、俺がプレゼントもらってるみたいになるけどいいの?わざわざここまで来てもらってるし。」
「いいの。だからはやくぅ。」
「はは、だったらそっちも早く目瞑ってよ。」
太陽は、今でも日々その輝きを増し続けている恒星らしい。
次に目を開けた時、そこに有るのが今まで見たどの笑顔よりも輝く、新しい君の笑顔だったらいいな。
たとえば俺が月だったとして。俺はもう、きっと君なしでは輝けない。
俺が生まれる前からそこに居て、今もずっと俺に光を与えてくれている。
俺たちが何度も追いかけっこを繰り返す内に出会ったひまわりたちも、
君の笑顔の前じゃなきゃ上手く前を向いて笑えないみたいだよ。
そんな君が、俺の世界を明るく照らしてくれる太陽みたいな君が生まれた日だから。
今日は俺にとっても特別な日だって言わせてほしい。
太陽が生まれた日。