やまぐー
凛君は頭がいい。
俺の言う頭が良いってのは勉強が出来るとかそうゆうことじゃなくて、
凛君はいつもあっという間に周りを楽しくさせるような色んな事を思いつく。そうゆうこと。
いわゆる悪知恵の働くやつってことだけれど、凛君が意外に面倒見が良いってことを俺はよく知ってる。
そうじゃなきゃ俺とこんな風に一緒に住んでなんて居られないだろうし、
この前みたいな事があっても放っておいたと思う。
この前のことって言うのは例のひろ君と永君のことについて。
あれも悪戯心が働いただけなのかも知れないけれど結果的に良い方へ転んだのだし、
話を聞く限りではあれがきっかけになってふたりがお互いの気持ちを確かめられたんだから良かったんじゃないかって思う。
そもそも凛君が永君を誘えって言わなければふたりが集まる事もなかったんだし、
やっぱりあれは凛君が居なければ成り立たなかった事なんだろう。
つまり俺は、そんな凛君に憧れていて、惹かれていて、どうしようもなく恋焦がれてる。
俺たちは世間には認められないかもしれないけれど、一応恋人って立場にあるから
恋してるってのとはちょっと違うかもしれないけれど。
だけど愛って言うには俺のそれは少し幼すぎる気がする。
ただ、ずっと凛君の側にいたい。そう思えることが俺にとって特別なんだ。
それに凛君は愛とかそんな、形のないものに縛られるのは嫌いだし、
俺が愛してるなんて言ってもなんかしっくりこないと思わない?
もちろん凛君が言ってほしいって言うなら俺はいくらでも言うよ。
だけどそうゆうの、あんまり好きじゃないでしょ?
凛君の寝顔をあきもせずボーっと眺めながらこんな事考えてる俺もどうかと思うけど、
普段の凛君は名前の通りいつも凛としていて、何事にも強気な表情で向かっていく。
そんな君が眠ってるときだけやわらかい顔しているんだから、そんな貴重な顔を見逃すわけにはいかないもん。
それに、なんと言っても寝起きの凛君は最高にかわいくて面白い。
それはもう、普段彼が思いつくどんな悪戯たちよりも、俺の気持ちをぐっとつかんで止まないんだ。
そろそろ十時。凛君はいつも、目覚ましがなくてもこの時間には目を覚ます。
なんでもそれ以上長く寝ていると、無性にいらいらしてしまうそうだ。
何でかは知らないけど、俺が思うにきっとあの、寝すぎた後に来る体のだるさが彼をそうさせるんだろう。
ところで俺がそんな事を考えている内に凛君は目を覚ましたようで、
むくりと上半身だけを布団に起こしてぼーっとしている。
「凛君、起きたの?おはよう。」
「…うん、少し寝すぎたかもしれない。」
「そうだね、そろそろ10時だけど。」
「なんか、ちょっと頭いたい。」
「昨日飲みすぎたのかな?」
「ううん。寝すぎで頭痛いだけ。今日の夢は裕次郎が出てきたから。…きっと、やーはストレートが似合わないから天パなんだ。」
「…何言ってるの?でもそっか、わんが出てきたんだ。だけど、起きたほうが本物に会えるんだし。そろそろこっち起きてきたら?」
「うん。だけ裕次郎が抱きしめてくれないと、わん起きれないし。」
「そうなの?この前は俺の一日はホットミルクから始まるって言ってたけど。」
「…こんな暑い日はカキ氷だな、いちご味で。」
「朝からそんなの用意できないよ。」
「…じゃあそれに変わる何かでもいいよ、裕次郎のキスとか。」
「ふーん、わんのキスっていちごカキ氷の代わり位にしか思われてなかったのか。」
「…違う、間違った、裕次郎が一番好き。」
今日は寝すぎた所為でちょっと調子が悪いみたい。
なんだかよくわからないことを言ってる。
だけどやっぱりいつもの朝のかわいい凛君だ。
こっちへまっすぐ向かってきて、すぽっと俺の腕に収まるその姿がたまらなく愛しい。
それこそこっちが食べちゃいたくなるくらいに。
「ねえ、凛君。ひろ君と永君どうなったかな?」
「…なんなの?それ。」
「え?なにが?」
「永君てなに。なんか変じゃない?」
「えー?そうかなぁ?だって皆は凛君、慧君、ひろ君って呼んでるのに永四郎だけそのままってのはなんかかわいそうだし。」
「ふーん。じゃあ良い。」
「…なんか怒ってる?」
「別に。」
「あ、わかった。皆と同じ風に呼ばれるの嫌なんでしょ?」
「…。」
「くくっ。じゃあなんて呼ぶ?凛ちゃんとか?」
「嫌。」
「なんだよ即答かよ。」
「うん、だって嫌だし。」
「じゃあ。…好きだよ、凛。」
「…。」
「あ、それはいいんだ。」
「…。」
「凛ー?」
「なにしてんだよ?」
「え?」
「離せ。」
「あ、なんだ。もう目覚めちゃったんだ。ちぇ。つまらないの。」
「ねえ凛、あとでひろ君たちに電話してみようか。」
「その呼び方、なんか慣れないからやめろ。」
「えー?さっきはいいって言ったのに。」
「さっきのはわんじゃない。宇宙人とはまともにとりあうな。」
「はぁ?宇宙人?」
「あれはわんに成り代わった宇宙人さぁ。」
「へえ、そうなんだ。じゃあ本物の凛君の一日っていったい何から始まるの?」
「それは…それは悪戯に決まってんだろ。よし、寛に電話かけるか。」
「お、いいねえ。」
「ちょっと待ってろ。その前にいちご味。」
「え?」
そう言った凛君の方を振り向いたら、ちゅっとキスされた。
結局のところ凛君は、素直じゃないだけで本当は俺の事大切に思ってくれてるんだと思う。
だけどそんなこと一切言わなくても俺の心を鷲掴みにしちゃう凛君って、やっぱり頭いい。
いろんなこと、いっぱい同時に考えてても全部何食わない顔でこなしちゃうんだ。
だから起き抜けのこの時間だけでも、目一杯甘えさせてあげるよ。
そんなことしか帰ってこなくても、凛君はちゃんと毎日を俺なんかと過ごしてくれてる。
本当にいいやつだ。それを俺は人間が出来てるって評価したいけど、凛君はそんなえらそうなのは嫌だって言いそうだから。
やっぱ君は悪賢い、俺の最高の相棒って事で。