これまでも俺はこの眼鏡で色んなものを見てきたし、
その中には思いもよらないような事柄もあった。
だけどいちいち気にしているのも最初のうちだけで、
今となっては少々のことでは驚かない自信があった。
だけど今回はさすがに、驚かずには居られなかった。
まさか彼が、そんなこと思っているなんて。
読心 〜知念クンの秘密〜
「平古場クン、いいかげんにしなさいよ。」
「うぇ!えーしろー…。」
「うぇ!じゃないよまったく。」
「やー、いつもどっからやってくるんばぁ。」
((くぬひゃー後ろに目ついてるんかやぁ?))
後ろに目が付いているも何も、普段女の子の事か悪戯する事しか考えてない
平古場クンが唯一心を落ち着かせているのがテニスをしている時だけだから、
余計なことを考えだせばすぐにわかる。
「どっからもなにもね、君が騒いでれば目につくのは当たり前でしょ。
大体ねぇ、君いつまでそうやって子どもみたいなことばっかしてるつもり?幼稚園児じゃないんだから。」
「はぁ〜。」
((まーた始まったさぁ、永四郎の説教。))
「はぁ〜、じゃないよ。ちゃんと聞いてるわけ?」
「ああー、聞いてる聞いてる。」
((あ、ひろし〜ちょうどいいところに。このうるさいのどっかやってくれ。))
はあ、やっぱりちゃんと聞いていないじゃないか。
目で合図したって俺には君の心丸見えなんだからね、無駄ですよ。
「ホントですか?どうせ知念クンに助けを求めようとかしょうもないこと考えてたんでしょ。
全部わかってるんですからね。とゆうことで知念クン、申し訳ありませんがそこで少々お待ち下さい。」
「ああ、わかった。」
「げえ。」
((最悪やっし。なんでばれたんばぁ?ったく。))
「ほらね、あたったでしょ。」
「…。」
((ちぇ。…あ、ひろしーの肩にはーべーるー…。))
ん?
「そんなことばっか考えてないでまじめにやりなさいよ。」
「…。」
((おーい、はーべーるー…。))
ちょっと、今はそんな事どうでもいいでしょ。
「そうすればね、俺だって何度もこうやって説教しなくて済むんだし、君だって何度も怒られなくて済むんだから。」
「…。」
((ぷは、ひろしーにはーべーるって。しかも黄色いの。))
ぶちっ
((似合わn
「〜…!知念クン、肩に蝶がのってますよ!黄色いの!ちょっと、人が話してる時くらいまじめに聞けるようにしなさいよ。」
…))
「!」
((やっぱりくぬひゃー、うしろに目ついてる…))
「とにかくね、今度見つけたらゴーヤーだから。」
「…ゴーヤーだけは勘弁。」
((ゴーヤーよりやーが怖いさあ…))
「わかったらさっさと戻ってまじめにやってよね。」
「…。」
「返事は?」
「はーい。」
((…ここでふざけたら何されるかわからんばぁ。))
とにかく平古場クンは目を離すとすぐに何かしら悪ふざけをしている。
副部長である甲斐クンまでもが一緒になってふざけていることがあるんだからタチが悪い。
比嘉中テニス部と言う厳しい環境にも耐えてきているくらいだから
それなりに実力もあるのはたしかなのだし、ふざけている暇があるんだったら
自分の技を磨くなりなんなりすればいいものを。
…そうそう忘れるところだった。
「お待たせしました知念クン。なにか用でしょうか?」
「…。」
((凛、はーべーるーに気付いてあんな二ヤついてたのか…。永四郎の話も碌に聞かないでそんなこと…。
そう言えば今度は何して怒られたのかやぁ。まぁどうせ碌な事してないんだろうけど。
凛はテニスしてる時が一番かっこいいんだからまじめにやればイナグにだってモテそうあんに。
…でもそれも嫌だな。凛にイナグなんかできたらわんはどうすればいいのかわからなくなってしまうさぁ。
そうなったときには反惚れ薬でも作るか。))
「知念クン?」
知念クンは普段の発言率が低い割に心の中では一人であれやこれやと考えにふけっている事が多い。
それから実験の事を考えているときなんかは色々とごちゃごちゃしていて、注意して聞いていると頭が痛くなってくる。
平古場クンや甲斐クンみたいにバカなことばっかり考えているよりはよっぽど良いのだけれど、
そうも色々難しそうな事を考えていられると話しかけるタイミングが分からなくなるってものだ。
「あい!えいしろー…。わっさい。なにかあびたかや?」
((!はあ、しかんだやっさー。いきなり何かと思った。))
「…いえ、なにか俺に用があって来たのかと思いまして。」
「あ、ああ、くり、頼まれてた部費の。」
((なにやってるかー、わんは。集中しれ。))
「あ、どうも。はい、たしかに受け取りました。」
「ああ、じゃあわんは戻る。」
((えーしろーは鋭いからあぬひゃーのことばっか考えていたらすぐにばれてしまうさぁ。
そうなったらどうすればいい。くぬひゃーだったら何も言わなそうやしが、
やっぱり気持ち悪いと思うのかやぁ。イキガがイキガを好きなんて。はあ、凛だってそう思うに決まってるばぁ。))
「はい、ありがとうございました…」
知念クン、今何て?男が男を好き?それは知念クンが平古場クンに好意を持っているってことなのか?
もともと知念クンと平古場クンは幼馴染だし、他のメンバーに比べて仲が良いことは知っている。
他の者よりも大切に思うのは当然だし、そうなってくれば家族に接する時のような感情が芽生えることもあるかもしれない。
だけど今のはどう考えてもその好きじゃなかっただろう。
ということは、男である知念クンは同じく男である平古場クンを恋愛対象に入れていて、
そういう意味で好きってことか。まさか知念クンがそんな事考えるなんて思いもしなかった。
どうしたことか、また他人の重大な秘密を知ってしまった。