がんまらー
「…ん〜。」
だるい
朝のベッドの中、ぼんやりとした頭でそう思った。
昨日は少々飲み過ぎただろうか。
けれど自分でもあんなに酒に弱いとは思ってもみなかったので勢いに任せて酒を煽ってしまった。
それに加えあのメンバーで集まったのが久しぶりということもあって、
久々に気心が知れている仲間と気持ちよく酒が飲めると思い、つい羽目を外してしまった。
そして…たった今自分に襲いかかっているのは初めてと言っていいほどの気分の悪さ。
これが二日酔いだろうか。頭は痛いし胃もさっきからムカムカしている。
今日はこのまま何もせずにぼーっとして過ごしたい、そんなことを思いながらぼんやりと天井を眺める。
それから寝がえりを打つように身じろいだ時、ふと何かの違和感を感じた。
それは普段感じるはずの無い感覚で、なんだかやけに体にシーツが張り付いてくるようだ。
そう、それはまるで裸で寝ている時のような…。
はっとしていつもベッドサイドに置いてあるはずのメガネを探る。
が、一向に手には何も触れない。
怪訝に思いながらそちらに目を向けると案の定探していた物はそこになかった。
慌てて部屋を見渡し、すぐ横のテーブルの上にぼんやりとその輪郭を見つけた。
手にとってそれをかけるとさっきまでの歪んだ空間をしっかり見渡せるようになった。
―散乱した服、見慣れない部屋、大きな背中―
どれをとっても毎朝の光景とはかけ離れたそれだった。
まさか。思いながらそろーりと布団の中をのぞいてみて後悔。
やっぱり…
「着てない。」
ということは… 隣に寝ている彼と、昨晩、なにか。
横目でちろりと窺うとまだ寝息をたてている彼の少し布団からはみ出た肩にも服が掛かっていない。
見なくてもわかる。きっと彼も自分と同じ状況なんだろう。
やっぱり。やっぱり何かあったんだ…。そこまで考えて恐ろしくなった。
自分でも断片的には昨日の事も覚えているけれど、そんな事をした記憶は一切なかった。
もしかすると彼はもっとはっきりと昨日の事を覚えているかもしれない。
そう思ったらどうしても真相を聞きたくなった。
ぐっすり寝ているところを悪いけれど、肩を揺すってみる。
「…知念クン、起きて。」
「ん。…ん〜、まだ…もう少し。」
「知念クン、お願い。」
「……!」
しばらくうだうだ言っていた知念クンもさすがに異変に気付いたのか驚いた顔で勢いよく起き上った。
「あ、あの…おはようございます。」
「…なんで永四郎がここに。」
「いや、昨日そのまま寝ちゃって泊らせて頂いたみたいです。」
「ああ。」
知念クンは納得したように頷いた後、喉が乾いたと布団を抜け出そうとした。
けれど一歩布団を出た途端、体に身に付くものが一切ないことに気付いて慌てて布団に潜り込んだ。
「う、わぁぁあっ!」
ひと叫びした後下半身に布団をぐるぐる手繰り寄せて真っ赤な顔をしてこっちを見てきた。
「…その様子じゃ、知念クンも覚えていないみたいですね。」
「…。」
「はあ、実は俺も昨日の事はあまり覚えてなくて。
知念クンに聞けば何かわかると思ったんですけど…。やっぱりあれですかね…その、俺たち。」
心なしか腰のあたりも痛い。
なにか昨日の手がかりがないか部屋を見渡すとテーブルの上にメモ用紙のようなものと飲み物を見つけた。
メモを手にとって読んでみる。
――――――――――――――――――――――――――
おふたりさんおはよう!
昨日の夜はどうでしたかな?←らぶらぶに決ってるし〜
このうっちん茶は選別ってことで。
お祝いお祝い。 よかったなぁ寛。
二日酔いなら飲むんだぞ〜!
優しい俺達は速やかに退散します。
どうぞごゆっくり〜!!
PS.朝起きて忘れたなんて言わせねえ!
証拠写真ばっちりゲットしたぜ!
あとで携帯に送っとく〜
From りんたん&ゆうぽん
――――――――――――――――――――――――――
右端の方には変な靴下の集団のような物がごちゃごちゃと描かれている。
「「…。」」
絶句。正直言ってそれしかなかった。
知念クンが慌ててベッドサイドに置いてあった携帯を開く。
そこには彼らからのメールが1件。
――――――――――――――
From 凛
件名:らぶらぶだなぁ
――――――――――――――
おふたりさん
見せつけてくれるねぇ。
見てるこっちが恥ずかしいし
あ、今度結果報告よろしく!
裕次郎と二人で楽しみに
待ってるぞ〜!
――――――――――――――
それから画像が1件。
開いたとたん知念クンの表情がピキッと固まって動かなくなった。
すぐに携帯を奪って覗き込むと、そこには俺たち二人がどアップで映っていた。
濃厚なキスを交わしている。
「…ち、知念クン。大丈夫?」
「あ?あ、ああ…。」
やっぱダメかも。なんて言ってる知念クンに甲斐クンと平古場クンが置いて行ったお茶を渡す。
「…とりあえず、どうぞ、これ。」
「ああ、ありがとう。」
それを俺から受け取って一気に半分以上飲んだ彼は少し落ち着きを取り戻したようだった。
「それで、どうしましょう。」
「ど、どうしましょうって?」
「だって俺たち、これ完全にヤってるでしょう。」
「ヤ、ヤってるって…で、でも、ふたりとも覚えてないだろ。」
「それはそうですがね、これだけ証拠がそろっている以上認めざるをえないでしょう。」
「…永四郎、ごめんなさい。」
「どうして知念クンが謝るんです?」
「…それは。」
「それは?」
「俺は昨日の記憶はあまりない…けど、俺が無理やりそういう風にした可能性はある。」
「…。」
「永四郎は嫌がっていたかも知れない。でも俺は永四郎が好きだから。
だからたぶん、俺の所為でこんなことになったと思う。」
「ちょ、ちょっと待って下さい。今何か、重要な事をさらっと言いませんでしたか。」
「え?あ、ああ…あの。」
知念クンは自分が言ったことの重大さに今更気付いたのか遅れて顔を赤くした。
「…知念クン、それだったら君が謝る必要はありませんよ。俺にだってその可能性はありますからね。」
「え?」
「つまり、俺も知念クンの事が好きなので。可能性は五分五分って事でしょう。
いや、きっと同意のもとでの事でしょうからどちらも悪くはないと思いますが?」
「…え!?」
「なんですか、その反応。知念クンが先に言い出したんじゃないですか。」
「そ、そうだけど。」
「信じられない?」
俺の問いに知念クンがこくこくと頷く。
「だったら、キスしてよ。そうしたらホントだって分かるかもよ。」
昨日の記憶がうっすらと蘇る。知念クンの唇の感触。
あれは…たしか俺から仕掛けた気がする。
俺からだけなんて悔しいから、知念クンにもしてほしい。
しばらく視線を泳がせていた知念クンが意を決したような顔をしてこっちを見る。
それから彼の顔が近付いてきてお互いの唇がそっと重なった。
その時。
〜〜〜♪〜〜〜
知念クンの手の中にあった携帯の着信が大音量で流れだした。
「うわっ!ごめんっ!」
慌てて携帯に出た知念クンが「なんだ、やーか。」なんて言ってるところを見ると
相手は甲斐クンか平古場クンあたりだろう。いや、二人とも揃っているみたいだ。
声が大きすぎてこちらまで会話が筒抜けている。
「どうしたんだ?凛。」
『俺もいるよ〜。』
「ああ、裕次郎もか。」
『なぁ寛、昨日どうだった?』
「…どうだったって。」
『なんだよー、お前今どこに居んの?』
「ベッド。」
『はぁ?もうこんな時間だぞ…永四郎はもう帰ったのか?』
「まだ、居る。」
『お!こんな時間から頑張っちゃってるわけ?』
「ち、違うさぁ。」
『なになに?スピーカーにしろよ凛君。』
『で、どうなったんだ?お前達。』
『ぷはっ』
『おい!黙っとけ。』
『ごめん凛君。』
知念クンがこちらをちろっと見て口ごもる。
『おーい、寛―聞いてんのか―?』
「聞いてる!俺達、俺達は…付き合うことになった。」
『『え?えええ!!』』
俺ももちろんそうしたかったけれど、まさか知念クンがちゃんと言ってくれるとは思っていなかったから
おもわず驚いた顔をして知念クンの方を見てしまった。
すると知念クンも自分の発言に驚いた、というような表情をして顔を真っ赤に染めていたから、きっとこの中で驚いていない人はいないと思う。
『そ、そこまで話が進んでたのか。』
『ま、まさか俺らの所為?どうしよう凛君。』
『い、いやそんなことねーだろ。』
『でも…まさかこんなことになるとは思わなかったじゃん?』
『な、なあ、寛。あのさぁ、昨日は…』
『凛君!マジでバラすの?』
『お、おお。正直こうなるとは思わんかったし。もういいだろ。』
「どういうことですか?詳しく聞かせてください。」
知念クンの携帯を受け取って話しかける。
『い!永四郎、マジでまだ居たんか。』
「ええ、何か問題でも?」
『い、いえ。ノープロブレムでございますけど…。』
「そう、ならいいじゃない。それより、何か隠してることがあるなら言ってよ。」