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済んでしまったことは仕方が無い。だけどこれはそんな言葉で片付くような話ではない。
なんで俺はあの時受け入れてしまったんだろう。
後悔したって後の祭りだとは分かっているけれど、とにかく誰かに聞いて欲しかった。
だから今日はこうして、長い付き合いで親友と呼べる彼、一氏を誘って居酒屋に来たというわけだ。

Honest

「はぁー、やってもた…。」
「なにがや?」
「やってもうてん、俺…。」
「やから、何がやねん。」
「なあ、やっぱ12個も離れてる奴とやってもうたらさすがにヤバイやんな。」
「は?まさかお前!」
「…おん、そのまさかや。」
「やってもたって!そっちかい!」

意外と普通な友人の反応に、少し安堵する。
昔からこいつとは馬鹿なことばっかりやってきたけど、
一氏はいけないことはいけないと、しっかり常識をわきまえた人間だ。
だからそんな彼がいいと言えばそれは常識内のことであるし、
ダメだと言えばそれはほんとにいけないことであるという気がする。
それにしてもこの反応は、常識のある人間にしては薄すぎる気がする。

「あー、ホンマ、アカンわ俺。」
「うーん、12個離れてるんかあ。39?…まあ、なくはないんとちゃう?ぎり。」

やっぱり。なにか変だとおもったら、勘違いしていたのか。
そうだ、彼がこんなこと許すとは思えない。
本当のことが分かった時の彼の反応がほんの少し怖かったけれど、
きちんと本当のことを伝えよう。

「ちゃうねん。」
「なにがちゃうん?」
「やから、12個上やなくて、下やねん。」
「え…、ええええええ!! あかんあかん!それはあかんって!12個下?え?相手まだ15やんか!
おま、ちょ、え!?それはヤバイどころの問題とちゃうで、下手したら訴えられるやろ。
まさかお前無理やり…。わあ親友が犯罪者になるなんて嫌やぁ!なんでやあ!なんでそんなことしてもうたん!?」

案の定、彼の反応は自分がいかに大変なことをしてしまったのかを思い知らされるものだった。
それはそうだよな。

「…せやんな。でも俺にもわからんねん。なんでこうなったんか。
ああ、なんでや、あの時どうして拒めへんかったんや…。相手は子供でこっちは大人やろ。」
「え?お前から誘ったんとちゃうんか。」

まさか。俺がそんなことをするような奴だとおもていたんだろうか、彼は。
…まあ、言われてみればそう思われてても仕方がないような気もしてきた。

「ちゃうで。いくらなんでも俺が教え子に手出すかいな。ああ、でもあれは俺のせいだったかもしれん。」
「おおおお、教え子!?おま!教え子と!?」
「おん。」
「…でもな、オサム。お前いくら相手が可愛くってピチピチでもやな、あっちは女子中学生やぞ。
大人としての常識があるんやったらな、拒むことくらいできるやろ。お前の方が力だって強いしわけやしな。」

それは自分でも分かっている。だけどあれは自分のとった言動が引き起こしたことであったかもしれないし、
それ以前に俺の力では到底太刀打ちできないような相手だった。

「ちゃうねん。」
「はあ、違うことないやろ。どう考えても俺の言ってることの方が正しいとおもうで?」
「や、せやねんけどな、ちゃうねん。」
「なにがや。」
「相手、…女やなくて男やねん。しかも194もある大男。」
「え………えぇぇえぇぇぇぇぇええ!!」

やっぱりそうなるよな。自分が彼の立場でもそうなるに違いない。

「おおおおおお、え!? ちょ、もう俺、え?っ…! 
まてまて、もうこれはパニック通り越して言葉がでーへんで。」
「せやな。」
「はっ!お前まさか!うちの子に手出したんとちゃうやろうな!…いやいや落ち着け。
ユウジはそんな子やあらへんで。それに194cmもないしなあ。ちゃうちゃう。」
「…まあ、お前の弟の友達やな。」
「…。もうお前んとこにうちの子は通わせられん!」
「それは問題ないで。お前んとこの子は小春君て男の子にベタベタで俺みたいなおっさん眼中にないからな。」
「…ユウジー!なんでやあ!いったいどうなってしまったんや、世の中は!」
「まあ、お前の周りだけやで、変なのは。」

それから一氏にどうしてこんなことになってしまったのかを事細かに説明し、
混乱やらなにやらでヤケになった彼と一緒に潰れるまで飲んだ。

彼に状況を説明する間に分かったことがある。
それはどうしてあの時千歳を拒むことができなかったのかについて。
考えてみれば単純だ。つまり、俺もあいつのことが好きだから。
たとえ彼が生徒でまだ15歳の子供であるとしても、俺と同じ男であるとしても、
たった一つ“好き”なんて目に見えない感情が存在するだけで、
それらのものがなかったことみたいに受け入れられてしまうんだ。
だけどどうすればいい?俺に残された選択はたった2つ。
ひとつは自分の感情に正直になって彼を受け入れること、
もうひとつは自分の感情を押し殺して常識に従うこと。
当たり前のことながら俺は後者を取るつもりだ。
だけどこの時にはもう、俺には実際1つしか選択肢は残っていなかったんだと思う。
それほどまでに彼への感情が大きくなっていることに、自分自身も気づいていなかった。

* * *

プルルルルルルルル…プルルルルルルルル…プルッ

3コール目で彼は電話に出た。
酒が回った頭では、自分が何をしているのか半分も理解できていなかった。
つまり、なにか用があって電話をかけたわけでもなく、
ただ単純に声が聞きたかっただけなのだ。
そんな理由も後からとってつけたようなもので、
実際は体が勝手に携帯のメモリから彼の番号を探し当て、
通話ボタンを押していただけの話だ。

『…はい。千歳ですけど。』
「………。」
『…どなたですか?』
「…。」
『あの、用がないなら切りますけど。』

最近の電話にはかけてきた相手の名前が表示されるものが多いと思うけれど、
彼は自分の番号を自宅の電話にまでは登録していなかったのだろうか。
いや、それ以前にこんな時間だ。さすがにもう寝ていてもおかしくない。
それならばディスプレイに表示された名前を見逃した可能性もある。

「俺や。」
『おれ?誰ですか。こんな遅くにかけてくるなんて。』
「なんやぁ、千歳〜。毎日会ってるっちゅーのに声でわからんのかいなぁ。
お前ホンマに俺のこと好きなんかー?それともただヤリたかっただけかぁ。ははっ。
それやったらなにもこんなおっさん捕まえてあんなことせんでもカワエエ女の子いっぱいおるやろお。」
『…オサムちゃん?』
「せや、お前の大好きなオサムちゃんやでぇ。」
『どげんしたと?こんな夜遅くに。』
「あぁ?そんなんどーでもええやろぉ。おお、どーでもええ。」
『…おさむちゃん、もしかして酔ってる?』
「いやいやぁ、そんなわけないやろぉ。んあ、そうや千歳、そこで待ってろよぉ。
今から愛しいオサムちゃんが会いにいったるからなぁ。」
『え?なにいっ…』

プチッ…

たった今自分が言ったセリフの意味もわからないまま、足は自然と彼の元へと向かっていた。


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