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ピーンポーン…ピンポンピンポンピンポーン 

オサムちゃん(酔ってるらしい)から謎の電話があった数十分後にインターホンが鳴らされた。
さすがに冗談だと思っていたけれど、本当に来たらしい。それにしてもうるさい。
今何時だと思ってるんだ。近所迷惑も甚だしい。
おかげでいそいで布団から抜け出してドアに駆け寄る羽目になった。

「しー!静かに!今何時やとおもっとうと?近所迷惑やけんはよ入って。」
「ん…あぁい。」
「オサムちゃん…本当に来たんやね。俺はてっきり冗談ば言いよるとおもっとったばい。」
「はははっ。」
「はははって…うわ、酒臭い。やっぱり酔っとるね。」
「酔っとらんで。」
「いや、酔っとるばい。」
「酔っとらんてぇ!」
『酔っとる!』
「酔っとらん〜!」
「はぁ、はいはい。オサムちゃんは酔ってませんねえ。」
「おん。へへ。」
「…。酔っとる。」
「ん〜。」

やっぱり予想した通りぐでんぐでんに酔ったオサムちゃんの登場。
オサムちゃんは酔っていても呂律が回らないということはないらしい。
なんだか口が達者な彼らしいけれど、
その反面言っていることや行動がいつもの彼のそれとはまるで違っている。
足もともおぼつかない様子だし、そもそも酔っていなければあんなことがあった後
こんな風に自分の家に押し掛けてくるなんてことはありえないとおもう。

「で、なにしにきたんやっけ?」
「なんや。千歳は俺にあいたなかったんか。せっかく会いに来てやったーちゅーのに冷たいなあ。」
「俺に会いに来てくれたと?それだけのために?」
「いやあ、本間は俺が会いたかっただけやでえ。くくっ。」
「え。」

オサムちゃんの予想外の発言に一瞬思考がとまって、茫然とした表情になってしまった。

「なんやぁ、冗談やんかぁ。そんな顔せんとってや。」
「ああ。」
「ああってなんやああって。
それやったら本間は冗談とちゃうって言い出せへんやんかぁ。あ、いってもた。はははははっ。」

…わかった。今日のこの人の発言は全部酔っ払いのたわごとであって、
真に受け止めてはいけないのだ。軽く受け流そう。

「オサムちゃん…ホントなにしにきたっちゃろ…。なあ、帰らんでいいと?
明日はやすみやけん俺は別によかばってん、こんなとこにいてよかやろうか。」
「んー?今日は帰らんで。千歳と一緒に居りたい。ええやろお?」
「…まあ、オサムちゃんがいいなら。」
「本間?千歳、ありがとうな。めっちゃ好きや。ひひっ」

「…。」

いやいや、軽く受け流すと決めた矢先にこれですか。本当に今夜はもつだろうか。
なんか軽く襲って食べてしまいそうなので、今日はこれくらいで勘弁していただきたい。

「オサムちゃん、俺今日はもう寝るっちゃけど、オサムちゃんはどうする?」
「えぇ、もう寝るのん?なんやつまらへんなぁ。いっぱいお話しよおもっとったのに。」
「…明日になったらいくらでも相手してあげるけん、今日はもう寝よ。」
「ん。わかった。」
「オサムちゃん着替えたほうがよかやろ?俺の服かしてあげるたい。」
「本間?ありがとお。」
「どーいたしまして。」

オサムちゃんはおとなしく服を脱ぎ始めているし、なんとかこれで落ち着きそうだ。
この短時間でどっと疲れた。
明日になればきっと彼も元に戻っているだろうし、今日のところはゆっくり休もう。
そう思ってスタンド以外の電気を消してベッドにもぐりこんだ。

「千歳ぇ。」
「ん?」
「一緒のとこで寝てもええの?」
「んー、お客さん用の布団がないけん、がまんしてくれんね。」
「ん。」
「電気消すばい。」
「んー。」
背中越しにごそごそと彼が布団に入ってきた気配がしたのでスタンドの電気そうと振り向いた。
するとなぜかパンツ一丁のオサムちゃんが当然のように横に寝っ転がっていた。

「え?なんで服着とらんと?俺の服かしたやろ?」
「んー、でも…暑い。」
「暑いじゃなかばい。今冬やけん、そんな恰好で寝よったら風邪ひくたい。」
「やったらこうするからええもん。」

そういったオサムちゃんが俺に抱きついてきた。

「いや、俺がよくない。」
「…なんでや。千歳は俺のこと嫌いなんか。じゃああれは嘘やったんかっ…うっ…それはいくら俺でも傷つくでっ………。」
「え、ええ!泣かんで。オサムちゃん。」
「やって、俺は千歳のこと大好きやのにっ…千歳はおれのこっと、嫌…い、なんやろぉっ?」

酔っ払いの涙腺は相当に緩いらしい。
まさかこんなことで泣くなんて思っても見なかった俺はあたふたと
色んなセリフを頭に浮かべて、結局一番納得させられそうなセリフを選ぶ。

「…オサムちゃん?俺もオサムちゃんのことすいとーよ、やけん泣かんで。」
「っ…本間?」
「うん、ホント。やけん、ね?」
「んん。」
「…そんで、服も着よ。」
「ん。」
「オサムちゃん、良い子やねえ。」
「んん。」

それにしても今日は彼のいつもと違う顔がたくさん見れた。
だけど同時におどろきと混乱で疲れが襲ってきた。眠い。
そろそろ着替え終わっただろうか?
…うん、後ろ前反対だけど。まあいいか。
ここで直そうものならまたややこしいことになりそうだ。
そう思って彼の名前を呼びながら自分の隣をポンポンとたたいて彼をこちらへ誘導した。

「オサムちゃん、こっちおいで。」
「んー。」

素直に自分の言葉に従う彼がちょっと可愛かったり。
一瞬よろけながらも再び布団の中に入ってくる彼をみて、はあ、やっと寝られると思ったのはつかの間。
電気を消そうと振り返った俺の首にオサムちゃんの腕が回されて、
次に俺の目の前にオサムちゃんのどアップが映ったとおもったら思いっきりキスされた。

「んっ…ふっ千歳ぇ。」
「っ!」
「好きや。」
「…オサムちゃん?」

彼は真っ直ぐに俺の目を見ている。
どうしよう?これは酔っ払っているからこんなことになっているんだろうか。
受け流した方がいいんだろうか。そんな事をもんもんと考えていたら、
オサムちゃんはちょっと照れたように笑った後、

「おやすみのちゅー。」

とか何とか言ってとっとベッドに転がったかと思ったら、その後すぐに寝息を立て始めた。

「…。」

ああ、どうしてくれるんだ。そこまでしておいて俺は放置か。
やっぱり酔っ払いにまともに取り合ってはいけない。
改めてそう思ったのだった。


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