「心配しなくてもちゃんと綺麗にしてくるからさ、裕次郎はそこで緊張しつつ待っとけよ。」

今にも高笑いが聞こえてきそうなテンションでそんな事を言い放ち、凛くんはさっさと浴室へ消えていった。
聞くところによると、エナジードリンクを2本一気に飲んだらしい。
一体何に緊張しつつ待てば良いのかも分からなかったのだけれど、そう言われるとなぜか、妙に緊張しだした。
考えてみれば、今までこんな風に宣言されてすることもなかったし、色々と余計な事を考える時間を与えられてしまった分、
変な緊張感が出てしまっているのかもしれない。
ベッドの上で何気なく雑誌を読んでいる振りをしていると、いつの間にか浴室からシャワーの音が消えていた。

「お、やる気満々か?」
「えっ、・・・ちがっ。」
「ははっ、冗談だろ?」

リビングにやってくるなり、ベッドに寝転ぶ俺を見て凛くんが不敵な笑いを浮かべながら茶化す様に言った。
なぜか慌てて雑誌を閉じて、正座をしてしまう自分が恨めしい。
凛くんはそんな俺の隣に乗り上げて、少しだけ申し訳なさそうな顔で背中を撫でた。

「そんなに硬くなんなよ、別にすることはいつもと変わらないんだし。」
「・・・わかってる、けど。」
「なんでそんな泣きそうな顔すんの?なんか処女犯す様な気になる。」
「う、うん、ごめん・・・でも変に緊張してしまって・・・、どうしよ、全然治まんない。」
「あー・・・、ごめんな、俺が緊張して待っとけとか言った所為だよな。」
「えっ・・・、いや・・。」
「まぁ、あれだ、とりあえず肩の力抜け?」

違うよ、とは言う暇もなく両肩をベッドに押し付けるようにグッと開かれて、訳も無く体がビクリと反応した。
それを見て凛くんが驚いた様な顔をするから、もうヤケクソになって無理やりにキスを仕掛けた。

「ふン、・・・ゆーじろう?」
「もういいよ、・・・変な事考える時間なくさせて?俺凛くんの事だけ考えてたい。」
「・・・裕次郎。」
「うん、俺そうやって凛くんに名前呼ばれるの好きだよ。」
「裕次郎・・・。」
「・・・その目も、好き。」
「裕次郎ぉ・・・なにそれ、そういうのすげぇ良い・・・。」

確かに凛くんの言った通り、やることはいつもと変わらない。
その所為か、始めてしまえば緊張はすぐにどこかへ行った。

「裕次郎、電気点けたままでいいか?」
「うん、いいよ。」
「良かった、・・・裕次郎の感じてる顔みたい。」
「ばかー、そんな不純な動機かよぉ。」
「ははっ、それをこんな事してる裕次郎が言うんだ。」
「・・・やっぱり電気消しましょうか。」
「えっ、ダメダメ、・・・・・・えいっ。」
「あぁっ!!なにしてんだよ、リモコン壊れるだろ!」
「だって、消したくない・・。」
「嘘だよ、もぉ・・・、俺だって凛くんの顔見たいもん。」
「え、そうなの?そうなの?・・・ふはっ、裕次郎かわいー。」
「うっさい!早くっ!」
「はいはい、分かりましたよう。」

本当は、俺の方が電気を点けていたいのだと思う。
今までずっと、明るい部屋で相手をじっと見ながらなんて、そんなことは出来ずに来たから。
身体を見ると萎えるとか、あまり声を出すなとか、そんなことばかり言われてきた。
だから凛くんが、俺っていう”男”を受け入れてくれることが嬉しい。
そんな凛くんと抱き合っている瞬間を、この目で見ていられるのが嬉しい。

「はぁっ、・・・んっ・・・、りん、く、・・ん。」
「裕次郎、今日感度良いなぁ。」
「だっ、・・はっ、・・・はっ、・・んんっ。」
「ん?なに?」
「ひやぁ、だ、・・・んん、んっ・・・。」
「もうイキたい?ひくひくしてる。」
「あっ、ぁっ、やぁ、だ、・・・一緒が、い、・・・まだぁ、・・・んっ。」
「え、・・・。」
「ん、ん、・・・一緒が、いっい、・・。」
「・・・それって、もう挿れていいってこと?」
「んっ、・・・そ、そぉ、・・・、は、やくっ・・・。」
「ははっ、やべぇ、俺裕次郎のそういうのに弱いんだけど・・・。」
「ん、ん?・・・っは、ぁ。」
「見て、ビンビン。」
「ん、・・・・・・り、くん・・・、凛くん・・・。」
「ん?ちょっとだけ待ってな、ゴムだけ着けさして。」
「凛くん・・・。」
「うん、・・・すぐだから。」
「凛くん。」
「ん?」
「・・・好き、すごく。」
「ははっ・・・・・、やめて、焦っちゃう。」
「・・・。」
「あぁ、・・ちょ、はやく、はやくっ、・・・も、ゆうじろおっ、なんか上手くつけられないっ。」
「・・・・・・くはっ、かっこいい凛くん台無し。」
「えー、もう・・・いいから、お願い、つけてっ。」
「・・・だったら無しでいいんじゃない。」
「ダメ、絶対中ん出ちゃう。」
「あー・・・、わかったわかった、じゃあ貸してみ・・・、焦るからいけないんだよ。」
「ぁっ、待って、・・・いいね、コレ、一回やってみてほしかった。」
「ばかー、確信犯かよぉ。」
「ははっ、そんなこ言いながら口でつけてくれんのな。」
「・・・噛んじゃいますよ。」
「だぁああっ!ダメダメ、それはマジで無理!想像だけで痛すぎる!」
「・・・・・・・・・あいよ、出来た。」
「うん・・・、おー、サンキュ、上等!・・・そこに足広げて寝てくれたらもっと上等。」
「・・・ん。」
「ごめん、もうちょっと広げられるかやぁ・・・・・・、そう、完璧。」
「もぅ、凛くん遅いって、・・・どんだけ焦らすつもりなの。」
「ははっ、ごめん、・・・焦らした方が裕次郎のイイ顔みれるかなぁって。」
「ばぁか、だから確信犯かって。」
「うん、ごめん、でも正直もう俺の方が余裕ないかも・・・、痛かったら言ってな。」

あんなに丁寧に慣らしてくれたんだから痛いはずはないけど、
できればこの心臓の、ぎゅーっていう痛みをどうにかしてほしい。
こればっかりは、自力で止める方法がまだ見つからない。

「あ、ぁっ、やべっ、・・ゅ、じ・・、待って、あんま締めないでっ、おねがぃ。」
「ん、・・・ムリっ・・・、勝手に、なっちゃ、・・んんっ。」
「マジか・・・、ゆうじろ、・・・ごめっ、きょ、全然保たんかもしれん・・・っ、・・・。」
「はぁ、はっ・・・ん、いいよっ・・・・ん、っは・・・。」
「裕次郎、・・・大丈夫か?・・・、痛くない?」
「ぃた、っくない・・・、きもちっ。」
「なら、・・・もっと声、出していいんど?」
「ぁ、だぁ、って、・・・いっ、の?いっぱい声出したら、嫌じゃ、ない?」
「んぁー・・・?それ、どういうこと?・・・ま、いいけどっ、声聞けないと、俺が心配になるからよ。」
「ふっ、・・・ふぁあっ、や、ぁ・・・まっ、もっと、もっと、ゆっく、ぁっ、はぁっ。」
「はっ、・・・もっと?・・ここ?・・・っ、・・触ってい?・・・ここ、触っていい?」
「ん、・・・・・ひんっ、・・あっ、あっ、はぁあ、・・やっ、やだぁっ、いやだぁっ、りんくっ、ん。」
「えっ、ごめっ、ちょっ、待って・・・、嫌だった?・・・っ、痛かった?」
「ち、が、・・・はっ、はやいの、やぁっ、・・・もっとぉ、もっとゆっくりっ・・・、はっ、さわるのは、いいっ、きもちい、・・・さわってっ・・・。」
「こう?・・・っ、ここ、気持ちい?・・・・・中すげぇ締まる、あついっ・・・。」
「ん、んんーっ、・・・いいっ、きもちぃ、・・・ゆっくり動くの、すきっ・・・ぁ、はっ・・・。」

凛くんの真剣な表情がすぐ近くにある。
本能で動く、動物の顔。
ポタポタ汗を垂らしながら、必死に俺を求めてる。
この顔が、すごく好きだ。
眩しくて、眩しくて、あったかくて、愛おしい。
肌が触れ合っている、ただそれだけの事に、どうしてこんなにも幸福を感じるんだろう。
離れたくない、離れたくない、こんなに強く思ったのは、きっと凛くんが初めてだ。

「お、れね、・・ぁ、・・・・り、んくんがっ、・・・すっごく、すきっ・・・。」
「・・・はっ、・・・・・・っ、・・・あ、りがとっ・・・。」

凛くんの嬉しそうな表情。
本当に綺麗に笑う。
俺にだけ向けられるその笑顔が、もっともっと好きだ。

「凛くんっ、・・・ふ、ぅん、あっ、・・・り、っくん、凛くんっ・・・。」
「ぁっ、きっつ、・・・はっ、はぁ、・・・も、イっていい?・・・ゆ、じろ、イってい?」
「んぅ、・・・まって、・・ぁ、まだぁっ・・・は、ぁ、・・・。」
「ぇ・・・、うっそ、ムリっ、んっ、んんっ・・・んーっ、・・・は、まだ?・・・はぁっ、はっ、まだぁっ?」
「まっだぁ、・・・もっ、ちょっと・・・はぁ、あ、ぁっ・・、中にいてっ・・。」
「っ・・、・・んーっ、ふっ、ふぅーっ、・・ごめっ、も、無理だっ・・・。」
「んっ、・・・んぁあっ・・・、あっ、・・ぁ・・・。」
「・・・・・・・・―ゆ、じろうっ――・・・。」

凛くんの、俺の名前を呼ぶ声も、その表情も、体温も、
俺しか知らない事の全部全部が、大好きだ。

きっとこの人が、俺の望んだ人、待っていた人。
もう大丈夫だって、傷つく必要はないんだって、そう強く感じる。
何度傷ついても諦めきれなかった理由が、やっと分かった気がした。
俺が持っていたものはきっと、期待じゃない、希望だ。
それは手に入れたければ忘れてはいけない、大切なことだった。


* * *


「凛くん、あ〜ん。」
「あー。」
「ぅはっ、・・・・・・アホ面ゲット!」
「うわ、最悪、何撮ってんだよ・・・。」
「くふふっ、凛くんのあ〜んの顔。」
「ったくよぉ・・・・・・・・・、あっ、・・・なおった・・?」
「うそ、やったね!」
「おぉ、直った直った・・・これで新しいリモコン買わずに済んだ。」
「投げるから悪いんだよー。」
「分かってるって、・・・・・・そうだ裕次郎、直った記念にチューして。」
「えー・・・。」
「目瞑れ。」
「もぉ、・・・どうせその顔撮る気でしょ?」
「・・・違うって。」
「バレバレですよう。」
「じゃあ、せっかく直ったからこのリモコンで電気消してしよっか。」
「えー、なんだぁ・・本当にしたかったの。」
「当たり前だろ、ばぁか。」





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