「知念クン、ごめんなさい。っ…好きにっなって…っごめんなさいっ。」
「えーしろー…。」

泣きながら謝る木手を抱きしめる。

「知念クン…。」

そうやって俺の名前を呼びながら見上げてくる永四郎の顔に自分のそれを寄せる。
あと少しで唇に触れそうになったそのとき。
どこからか現れたゴーヤの怪物のようなものが俺の腹に体当たりしてきて何か言う。

「…て!…にーにー…おきてー!」

「うわっ!」

目を開けるとそこにはドアップの妹の顔があった。
どうやら何度起こしても起きない兄に痺れを切らして圧し掛かって来たらしい。
それにしても、なんて夢を見るんだ。
ゴーヤの怪物が来なかったらどうなっていたことだろう…
そんな事を考えて頭を振る。 とりあえず朝ごはんを食べて頭をしっかり回転させよう。





「ひろしー、お前何でそんなボーっとしてんの?俺の話全然聞いてないだろ。」
「え?…聞いてたよ、彼女が欲しいって話だろ?」
「…俺だって何時もそんな話ばっかしてる訳じゃねーよ…。」

正直な話、昨日から凛の話はまったく頭に入ってきていなかった。
適当に予想して言ってみた答えは見事にはずれて、おかげで凛が拗ねた。

「ごめん、考え事してた。」
「んー?悩みがあるなら俺に言ってみ。」
「ありがとう、でももうちょっと自分で考えてみる。」
「…ん、わかった。寛がそう言うなら考えてみるといい。」

せっかく凛が申し出てくれたのに断るのも悪いと思ったけれど、やっぱり凛と言えどこんな相談をする訳にはいかない。
その後凛は気を使ってか、何事も無かったかの様に話し始めた。けれどやっぱり話題は女の子の事ばかりだ。

学校についてとりあえず席についてぼーっとする。
やはり一度永四郎と話をするべきだと思い席を立つと、見計らったようなタイミングで始業を知らせるチャイムが鳴った。
仕方が無いので休み時間に会いに行く事に決めて再び席につく。
案の定授業はまったく頭に入ってこず、気が付くと1時間目が終わり休憩時間になっていた。
そのまま永四郎のクラスへ向かったのだけれど、いつも自分の机で予習や読書をしているはずの永四郎の姿が今日に限って見当たらない。
諦めて次の休み時間に来る事にして休み時間ごとに会いに行くも、
次の休みもその次の休みも永四郎の姿は見当たらず、結局昼休みになっても永四郎に会うことは出来なかった。
もしかして自分を避けているんだろうか。
いつもどおりに接してくれといったのは永四郎の癖に、その本人が避けるだなんて。 いくら俺でも少し腹が立ってきた。

「ひろしー、どうしたの?そんなにイライラして。」
「…何が?イライラなんてしてないし。」
「そうかー?まーいいけどー。」

そういって裕次郎が俺の弁当からおかずを奪ってさっと口に放り込む。
それにも気付かずにぼーっとしてる俺に、周りの皆は不思議そうに首をかしげた。





放課後。結局今日は永四郎の姿をまだ見ていない。
なんとなく避けられていることに傷付いている自分がいた。
だけどさすがに部活でまで避けることは出来ないだろうといつもより急ぎ気味で向かった部室で、またもやがっかりさせられることになる。
…永四郎が、来ない。

「んー?永四郎なら今日は休みだぞ、熱で寝てるんだってさ。」

慧君に永四郎の居場所を聞いたところ、こんな答えが返ってきた。

「え…。」

すると近くで見ていた裕次郎が呆れたように言う。

「やっぱり聞いてなかったのかよ?慧君さっきから言ってたじゃん。」

裕次郎の話によると、慧君は今日の昼休みにすでにこのことを話していたらしく、永四郎が風邪なんてめずらしーなーという話題が出ていたようだ。
とりあえず避けられていたわけじゃないと気付いて、ホッ胸をなでおろす。それから一人で勝手に勘違いして永四郎を悪者扱いしたことを反省した。


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