それから3日後
あれほどの熱があったというのに永四郎は普段と変わらない様子で登校してきて、
朝練に参加し、体育にも参加し、挙句に放課後の部活にまで参加している。
そればかりか休んでいた分を取り戻すように普段より少し多目の練習メニューをこなしている。

「永四郎、無理するなよ。」
「大丈夫です、しっかり3日も休みましたから。」
「でも、結構熱出てたし…。」
「心配要りませんよ、俺の体はそんなにやわじゃありませんからね。」
「3日前はアイスも自分で食べられないくらい弱ってただろ。」
「っ…知念クン、そのことは他の人に言ったりしないでくださいよ。」
「分かってる。」
「あ、それと母が今日、晩御飯を食べにうちに来てはどうかと。知念クンさえ良ければ寄っていきませんか?」
「あー、いいのか?じゃあお言葉に甘えさせていただく。」

あの日電話をもらってから結構楽しみにしていたから、当然お邪魔することにした。
そんな話をしていると後ろから突然声をかけられる。

「おい、二人で何コソコソ話してるんだ?」
「うわっ!」
「うわって…なんだよ、人を化けものみたいに。」
「凛がいきなり出てくるのが悪いんだろ。」
「そうですよ。」
また凛か、何でこいつは何時も後ろから声を掛けてくるんだ。

「ふん、まぁいい。で、何話してたんだ?」
「この後永四郎の家に行くって話し。」
「え?なんで?」
「この間俺が熱で休んでいた日に知念クンがお見舞いに来てくれたので、そのお礼に母が知念クンを今夜の晩ご飯に招待したんです。」
「ふーん。寛がお見舞いねぇ、それいつの話?」
「俺が休んだ初日ですけど。」
「へー、あんなにイライラして人の話なんてぜんっぜん聞いてなかったひろしーがねぇ。
 他のことには集中しないで永四郎のお見舞いだけはしっかりしたんかぁ。」
「え?」
「…。」
「やーっぱり寛の不機嫌だった理由は永四郎が居なかったからなんだなぁ。」
「それはどういう…」
「いやぁ、永四郎にも見せてやりたかったねぇ。ひろしーのやつ永四郎が居ないからってめっちゃイライラしてたんだぜ。
一日中ぼーっとして慧君の話もぜんっぜん聞かないで。」
「凛!」
「ホントのことじゃん、怒んなよぉー。くくくっ」
「りーんー!!!」
「わー、カンカンやっし。くははっ。」

しばらく追っかけまわしていると凛が何処かへ行ったので放っておくことにした。
それにしても凛のやつ、余計なことを言ってくれたな。
確かに俺はあの日永四郎がいなくてイライラしてたってのは間違いではないけれど、
そういう意味でイライラしてたわけではない…と、思う。
でも実際の所はどうなんだろう。
永四郎に避けられていると思ってイライラしていたけれど、それ以上に寂しさも感じていた気もする。
一瞬ちらっと永四郎の方に視線を向けると、ぼーっと俺達の追いかけっこを見ていたらしい永四郎と目が合った。
けれどなんとなくすぐに逸らしてしまって、これではまるで好きだと言っているみたいじゃないかという様な気になる。
そう思ってもう一度そちらの方へ目線を向けてみたけれど、今度は永四郎が俯いて居て目が合うことはなかった。





部活が終わって永四郎と並んで歩く。
特にいつもと変わらない、普通の話題の普通の会話をしながら。
けれどさっきのこともあって、気まずいやら恥ずかしいやらでなんだかやたらと暑い。
しばらく歩くとのどが渇いてきて、水を飲むためペットボトルを鞄から取り出そうとした時、カサッと手に何かが触れる。
かばんの中を覗くと、その正体は前に永四郎が自分の下駄箱に入れたラブレターだった。
それに気が付いた瞬間さらに恥ずかしさが増して、永四郎の顔が見れなくなる。
「知念クン?」
「…何?」
「なんだか上の空って感じがしたので。あの、もしかして今日本当は来たくなかったとか。」
「え?そ、そんな訳無い!」
「乗り気でない様でしたら無理にとは言いませんよ。」
「…だから、そんなこと思ってないって。」
「じゃあ、どうかしましたか?」
「…ちょっと考え事してた。」
「…そうですか。……わがままを言うと、俺といるときは俺のことを考えてほしいです。」
「…。」

今日みたいな普通の日でも永四郎がそんな事を言いだすなんて。
あの時は熱の所為だと思っていたけれど実際はそうではないらしい。
それは悪い変化ではないし、むしろあの日思った普段から甘えてほしいってことが
実際に起こっているんだから嬉しいけれど、あまりの変化にさすがに驚いて動きが止まる。
永四郎は俺が突然立ち止まったことに気付いて振り返った。

「知念クン?…すみません、迷惑でしたね。」
「いや、謝る必要はない。」
「え?」
「永四郎がなにか悪いこと、したわけじゃない。だから、謝ることはない。」
「…はい。」

でも確かに一緒に歩いていて相手がぼーっと上の空ってのも気分が良い話ではない。
だから正直に自分の気持ちをぶつけてみることにした。

「永四郎、俺が今考えてたのは、…あの手紙のことだ。」
「あ…。」
「永四郎に聞きたいことがある。」
「…。」
「永四郎はあの手紙を俺に渡して、どうするつもりだったんだ?どうしたかったんだ?
どーゆうつもりであの手紙を書いた?今まで普通に接してきてたのに、急にいつもと違う態度をとる。
それでも永四郎は諦めるって言った。そもそもそんなに簡単に諦められるものなのか?俺には何も、何一つ分からない。」
「…。」
「何か言ってくれないと何も分からないぞ。」
「…ごめんなさい。」
「え?」
「迷惑だってわかってます。知念クンも俺も男だし、おかしいって自分でもわかってます。
だけどそんなのは…知念クンを、あきらめられる理由にはならなくて、本当は…っあきらめたくなくて、
そっ…それでももう隠しているのが辛くて、この気持ちを伝えたくてっ…だけど嫌われるのが怖いからっ…
側に居たいからっ…あきらめるって書いたけど、やっぱりっそんなっことは出来なくて、
っ…知念クンがちょっとでも俺に笑いかけてくれたらって。ちょっとでも俺のこと考えてくれたらって。」

そう言ってぼろぼろと涙をこぼし始める永四郎。

「知念クン、ごめんなさい。っ…好きにっなって…っごめんなさいっ。」

デジャブだ。それはあの夢に出てきたシーンだった。
なんで永四郎が謝ってるんだろう。
人を好きになることに罪はない。だから永四郎が謝る理由も無かった。
それなのに、ただひたすらに泣きながら謝る姿をみて、胸がズキズキ痛みだす。
勝手に動き出した俺の両腕は、やっぱり夢と同じように永四郎を抱きしめていた。
だけど夢みたいに永四郎が泣きやむなんてことはなくて、もっと盛大に泣き出す。
夕暮れの道で泣きわめく男子中学生とそれを抱きしめる大男、どんな絵づらだろう。
とっさに動いた俺の体は永四郎の顎を持って顔を上げさると、そのまま屈んで口づけた。
今度はゴーヤの怪物に邪魔されることもなく、永四郎は驚いて泣きやんだ。
そうか、あいつが邪魔しなければ永四郎は無事に泣きやんで、俺もちょっと幸せな気分になれたんだ。

「ち、ねんく? いまなに…」
「なにって、キス?」
「なんで。」
「なんでって永四郎が泣き止まないから。」
「それだけ?それだけなの?」
「あとは…」

自分でも何が何だかわからなかった。体が勝手に動いたから。
だけどたぶん、自分でも気付かないうちにきっと。
永四郎は俺の中で特別な存在になっていたんだろう。
それに、あんなひどい泣き顔に口づけられるんだから俺も相当永四郎のこと

「好き」

ってことなんだろう。

「え?」
「だから、俺も永四郎の好きだから。」

そういった瞬間永四郎がまた泣き出した。
あー、もう。永四郎って本当はこんなに泣き虫だったのか。
だけどもうその涙の止め方を知っている。
「嬉しくて。」なんて言いながら泣いている君にまたひとつ口づけを落とした。


なんか最終的に結構無理やりな展開になってしまった感がぬぐえないですが…。

私が書くと誰でも泣き虫になっちゃいます。永四郎君もしかり。

展開早い、方言微妙、キャラ崩壊の三重苦に耐えながらも最後まで読んで下さった方、ありがとうございました^^

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