「ただいま。」
「こんばんわ。」
「あー、おかえり。永四郎君もいらっしゃい。」

永四郎を連れて家に帰ると台所で晩御飯を作っていたらしい母が玄関までやってきた。
普段なかなか人を連れてくることがない俺が久しぶりに友達を連れてくるって言うんで
張り切ってご飯作るね!なんてうきうきしている様子だったけれど、なにがそんなに嬉しいのか俺にはさっぱり分からない。

「お邪魔します。」
「はーい、ご飯もうすぐできるから寛の部屋で待っててね。」
「はい、わかりました。」

あら、そんなにかしこまらなくてもいいのよぉ。 とか何とかいいながら再び台所に消えた母に永四郎は拍子抜けしているようだった。

「なんか、イメージと違うだろ。」
「そうですね、もっとこう…静かーな感じかと。」
「ああ、よく言われる。俺がこんなだからな。」

そんな話をしながら俺の部屋に着くと、2人とも荷物を置いて床に座った。

「良い匂いですね。なんだろう、今日のご飯。」
「ゴーヤーちゃんぷるーだよ。」
「「うわぁっ!」」

またもや突然現れた弟に二人して大声をあげて驚いてしまった。
凛といいこいつといい…何でいつもこう突然現れるのか。
心臓に悪いからやめてほしい。

「おい!突然出てくるな。びっくりするだろ。」
「ごめんなさい。永四郎にーにー、ゴーヤー好きだって聞いたから今日はゴーヤー料理が多いんだよ。」
「あ、なんか悪いですね、気を使っていただいて。」
「んーん。僕もにーにーもみんなゴーヤー好きだから大丈夫。」
「へえー、偉いですね。平古場クンや甲斐クンにも聞かせてあげたいよ。」

そうだな、なんて話していると、弟が永四郎を遊びに誘いだした。

「ねぇねぇ、永四郎にーにーあーそぼ。」
「永四郎は部活の後で疲れてるんだから。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
「んー、そうかぁ?じゃあ遊んでやってくれ。おい、あまりしつこくするなよ。」
「うん、わかってる。でもにーにーが恋人連れてきたら遊ぶって約束だから。」
「「!」」
「(どうゆうことですか、知念クン。)」

永四郎が声をひそめて聞いてくる。
まさか俺が家族に永四郎が恋人だなんていうわけがないし、
どうして弟がそんな事を突然言って来たのかもさっぱり見当がつかなかった。

「んー?永四郎が俺の恋人ってどういう意味だ?」
「そうでしょ?」

できるだけひきつった顔を抑えながら聞いてみたけれど、弟はさも当たり前だというように永四郎が俺の彼女だと繰り返した。
まあ間違ってはいない、けれど問題は何故それをこいつが知っているかだ。

「…なんでそう思う。」
「にーにーたちがちゅーしてるの見たって凛にーにーが言ってた。」
「………。」

永四郎のほうを見ると今にも怒鳴りだしそうな顔をして必死で怒りに堪えている様子だ。
あわてて後で遊んでやるからと弟を部屋から追い出すと、ドアを閉めてついでに鍵もかけた。
永四郎の表情はあやしげな笑みに変わっていて、思わず「ひっ!」と声をあげそうになる。

「ふふふふふ、平古場クン。ゴーヤーですね。いや、ゴーヤーなんて甘っちょろいものでは済まされないと思いなさいよ。」

その表情を見て凛に対する怒りよりもまず、哀れみのほうが勝った。
明日から凛の顔を拝めるだろうか。それも自業自得か。
それよりあの時凛に見られていたなんて。
欲はそんなに強いほうではないけれど、自分しか知らないと思っていた永四郎のあの表情を誰かに見られていたなんて侵害だ。
そう思うと居てもたってもいられなくなった。
俺は未だにぷんぷん怒っている永四郎の腕を引っ張ると強引に口づける。
あのときみたいに驚いた顔をした永四郎は、今度は泣きだすなんてことはせずにリンゴみたいに真っ赤になった。
そのことに一人満足して永四郎の腕を放してやる。
だって俺意外に永四郎にこんな顔させられるやつはいないだろう。
それにもう一つわかったこと。
キスって泣いてる時以外にも、怒ってる永四郎を止めることもできるんだな。


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