「なぁ〜、白石、なぁ〜って。自分人の話聞いてへんやろ。」
「ん?ああ、え?聞いてんで、聞いてる。」
まただ。最近白石がボーっとする事が増えた。
それは明らかに千歳と仲良くなり出してから始まった事なので、
千歳や金ちゃんはともかく、俺を含めそれ以外の部員にはその理由が明確だった。
今だって屋上から千歳が裏山に入っていくのを熱心に見つめている。
「はぁ、またボーっとっしとったし。全然聞いてへんってバレバレやで。」
「…すまん。」
「…自分そんなに千歳のことが気になるんか。」
「せやねん。…!!!っへ?なんて?なんていったん今?」
「せやから、そんなに千歳が気になるんかって。」
「ななな、何でやねん!そんなわけあらへんやろー!」
「はあ、わかりやっす!自分千歳の事見つめすぎやしな、ほんで千歳が通ったら目で追ってるやろ。
話も千歳の話ばっかりやし。バレバレやで。まあ千歳は気付いてへんみたいやけど?」
「っ…!本間!?どないしよ。」
「ま、とりあえず部長がホモってばれないようにすればいいって話っスわ。」
「うわあ!?どっからわいた!財前!」
突然の財前の訪問にびっくりしておもわず声を荒げてしまった。
「謙也さん、なんすかその言い方。せっかく頼まれとったCD持ってきてあげたってのに。」
「あ、…そうなん?ありがとう。」
「まあ、いいっスわ。とりあえず、部長はこのままだとわかりやすすぎるんで、
気を付けたほうがいいっスね。まあ、あの人も相当ぼんやりしてるんで気付くとも思えないっスけど。」
「「…。」」
「じゃ、俺は戻るんで。謙也さん、それ後でちゃんと返してくださいよ。」
財前はそう言い残して来たときと同じく疾風のごとく消えていった。
でもたしかに、それは俺も思っていたことだった。
「…うわぁー!謙也!なんで財前にまでばれとるん!?後は誰が知っとるん?」
「や、まあほとんどの部員は知っとると思うで。(おまえがホモだって知ってるやつは。)」
「えぇ!もう本間にどないしたらええねやー!」
「まあ、とりあえず落ち着けや。もうバレてしまったもんは仕方ないやろ。後は千歳にバレたくないんやったら、
へんな態度とらんといつも通りにしたったらええっちゅー話や。俺でよければなんかあったら相談乗るし。」
「うぅー、ありがとう謙也。やっぱり持つべきものは友達やな。」
それから白石のはなしを聞いて、やっぱり千歳のことが好きなんだということがわかった。
なんでも千歳とは転校してくるちょっと前に会っていて、一目ぼれしたんだとか。
たしかに休み明けの初日、すでに白石のことを知っているらしい千歳が俺らのクラスにやってきた事を覚えている。
「なあ、でも自分、千歳のどこがそんなにええん?あいついっつも授業サボって裏山入ってくは、
目を放したらすーぐどっかいくわで大変やん。なんかいっつもぼよよんとしとるしな。」
「…全部好きやで。あの雰囲気も好きやし、背が高いとこもええやろ、
それになんといってもあの人懐っこい笑顔が最高やな。ほんで…、俺らの知らない世界を知ってる。」
なんとなく最後の部分は寂しそうに聞こえた。俺らの知らない世界。なんのことだろうか。
たしかにあいつはもともとここにいたわけじゃないし、他の場所で過ごしてきたぶん色んなことを知っているはす。
だけど白石が言っているのはもっとべつの、遠い世界の話のような気がした。
「自分ベタぼれやな。…千歳が元いた場所に帰るってなったらどないするん?」
「…そうやな、俺には帰ってくるのを待つしか出来ひんからな。待つんやろうな。」
「着いていこうとは思わんの?」
「…それには遠すぎんねん。」
そして白石はどこか遠くを見つめた。
俺にはよくわからなかったけど、とにかくなにかが二人の間にあって、
それを飛び越えるにはまだ壁が高すぎるってことなんだろうか。
同じものが見えているとは思わないけど、