「わ、最悪…、閉まってるし。」
「えー…、マジか。」

CLOSEの看板が掲げられた扉の前、落胆の表情で立ち尽くす。
こんな人気のない路地に入ってしまって、他に空いている店など有りそうもない。

「何で今日に限って…。」
「‥どーする?帰る?」
「なんで?…裕次郎帰りたい?」
「ていうより、気付いたらこんな時間だったからさぁ…。」
「いいだろー、朝まで付き合えよぉ。」
「朝までー?…俺最近、徹夜は体に応えます。」
「なんでお前の身体、そこまで老朽化してんだよ?」
「知りません、俺が聞きたいくらいです。」
「えー…、けどさぁ…、俺まだ帰りたくない。」
「………あぁ、うん、そだね、もう最終バスも出ちゃってるもんね。」
「うん。」
「じゃあ、他の場所探そっか?」
「んー、でも…、もう歩きたくない。」
「なら、どっか適当なコンビニとかで酒買って、近くのホテルにでも入る?」
「それだ!」

宿も決めずに近くのコンビニでしこたま酒を買い込んだ所為で、
重くて移動距離が限られ、選択の余地もなく半径1km圏内のラブホテルへチェックイン。
安く済むのは良いけれど、素面で居るには少々刺激が強い。
ガラス張りのシャワールームが、生々しさを強調している。
よくよく考えれば、ふたりでこんな所へ来るのは初めての事だ。
なにせこれまでの俺達にはこんな所、使う用途が無かった。
キス以上の事は一切無い健全な付き合いをして、あの頃はそれで満足だったのだ。

「凛、次何飲むの?」
「テキトーでいいよ。」
「んじゃ、はい、ストローング。」
「あ、それシリーズならシークワァーサーが良い。」
「えー…?シークワァーサー?…あ、あった、…ん。」
「さんきゅ。」
「うん。」
「つーか、泡盛とか買ってホントに飲むのかよ?」
「知らーん、何故か買っちゃった。」
「なんだそれ。」



「なぁ、凛は何でそんなに家に帰りたくないの?」
「裕次郎と居たいからぁ…。」
「くっく、なんだよそれぇ。」
「…ウソじゃねーもん。」
「ふーん、そっか、…よしよし。」

凛が酒に強くないという事を聞いて知った上で、酔わせてみたいからと割かし度数の高い缶ばかりを選んで手渡していた。
はたと気が付いて良く考えてみれば、酔われて困るのは自分の方じゃないのかという事に思いあたる。
酒での過ちを避けたい場合、どちらも理性を失わない程度に飲んでいるのが一番なはずなのだ。

「裕次郎ぉ…。」
「んー?俺、シャワー浴びてきてい?汗でベトベトして気持ち悪いんだよね。」
「うん…。」

酔わせてみたいなどと言っている間に、とっくに凛は酔っているではないか。
はだけた浴衣の隙間から、凛の昔より白くなった肌が覗く。
ゴクリと生唾を呑み込んで、必死で雑念を振り払い、何とか逃げ場を確保する。
シースルーのシャワールームは頂けないが、空間の隔離が出来るだけまだ良い。
お湯を浴びるという行為も、落ち着くには丁度良いかもしれない。

「ゆうじろー、俺も一緒入っていー?」
「やー、もう終わるし。」
「ぬぅ…。」
「え、てか凛入んの?危なくね?結構ふらついてるし。」
「うん、危ないから一緒に入ろー。」
「えー…、俺は外から見ててあげるよ。」
「やっだぁ、何ソレ興奮するぅ…。」
「へぇ、そう、…それはよかったね。」
「冷てぇなぁ…。」

宣言通り、シャワーを浴びる凛の背中を見守っていると、
振り返って俺が見ていることに気が付いた凛が、怪訝の表情を浮かべた。
こんな所で滑って死んだりしないから、もう見て居なくていい。
凛がそういうので、ピスタチオの袋を1袋開けて、ひたすら殻と戦った。

「え、うそ、湯船入ってんの?」
「うん、いいじゃん。」
「まぁ良いけど、そろそろ俺、眠くなってきたよ?」
「ダメー、寝てたら強制的に叩き起こすぞ。」
「何ソレツライ。」
「ちょっとくらい待ってろよぉ、飲んでてもいいから。」
「うんー。」

やけに静かなことに気が付いて、見上げてみればびっくり。
こんな透け透けスケベ風呂で、ひとりで湯船に浸かれる勇気がすごい。
それは良いとして、俺はいったい何をして時間を潰せば…?
思い立って泡盛に手を伸ばす。
開けもせずに捨てるのはあまりにもったいないけれど、飲むとすれば今しかない。
凛にはこれ以上、飲ませる訳にはいかないのだ。



ガシガシ髪を拭きながら、バスローブ姿で目の前に凛がやってくる。
どれくらい湯船に浸かっていたのかは知らないけれど、ずいぶんと長風呂だったように思う。

「ごめん凛ー、結構飲んじゃったぁ…。」
「あ、スゲッ、マジでほとんど残ってねぇ。」
「ごめんねー、りんー…。」
「まぁ、いいけどよぉ、…どーした?急に。」
「うんー…りんー。」
「何?」
「凛…。」
「何だよ。」
「…凛、……。」
「だから、どうしたんだよぉ?」
「んー…。」
「…ぁっ、…なんでそんな風に触んのぉ…。」
「…いや?」
「嫌ではない、けど…、立っちゃうからっ。」
「うん…、わざとそういう風に触ってんの。」
「は、ぁっ、…まって、ヤんの?」
「うん…。」
「マジで?」
「…だめ?」
「……………いーよ。」



まるで口がいう事を聞かない。
理性という枷が外れて、身体のコントロールが出来なくなった。
これは後で、大変なことになる。
そう思う気持ちはあるのに、まるで傍観者みたいに、理性は自分の身体に無関心だ。
抑えていた触れたいという欲求を爆発させ、只々気持ちが良いという感覚を貪って、
凛を抱いているという事実が興奮に拍車をかける。
もうどうにでもなれ。
そんな考えが、徐々に頭を支配していった。

「あっ、もっ…、そこ、ぉっ…、きもちっ…、ぁっ。」
「…っ、…ねぇ、凛っ、腰、…、揺れすぎじゃない?」
「だぁって、…ぁ、あぁっ、あっ…それ、すごっ、いっ…んっ…。」
「えっちだねぇっ…、凛。」
「んっ、んんっ…、やだぁっ…ふっ、ぁっ…、あ、あぁっ。」
「…ん、…っ何が?」
「はっ、恥ずかしいこと、言うなっ…ばかっ、ぁ。」
「うん?…っ、……ごめんね?」
「あ、…あぁっ、ねぇ、…ねぇえっ、ヤダそれだめっ…んんっ。」
「なぁ、…もう凛、…っ、声、可愛いっ…、…。」
「ねぇーっ、…もういいから、そういうのぉっ、…んぁあっ、…ぁ、痛ぁいっ。」
「ごめんね、項んトコ、白くておいしそうだったからっ、つい。…あ、歯形付いちゃった、暫く髪結べないねっ、ごめん。」
「…もぉ、やだぁ…、なんなのっ…、ねぇっ!あっ、あっ、あぁあっ、…いっ、まそこ触わんな、イキそうなのっ。」
「うん、…イキな?」
「やだっ、…もっ、マジでっ…んんーっ、…ぅあっ、…あぁっ、ぁっ、…っふ、…ゆうじろッ…。」
「すっげ、凛のイキ顔初めて見る…、かーいいね。」
「もっ、なんな、ぅ、ぁっ…、わ、ざわざこっち、見んなっ、ぁ、…あっ、あぁっ、んっ…んん――っ、…ぁ…は、…。」



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