「あ、裕次郎君お久しぶりです。」
「おー!!葵ちゃん?お久しぶりだねー。でーじ凛君に似てきた。」
「うん!パパの血が流れてるから!あとね、寛おじちゃんの血も流れてるんだよ?」
「ん?ああ、そうか、そうだなあ。確かにあにひゃーにもちょっと似てる。…あい?そういえば凛君達は?」
「え?そこに居るよ?パパが裕次郎君呼んできてって。」
「そっか、じゃあ行こう。てーつなぐ?」
「ううん。私はおじちゃんと手つなぐの。ごめんね?」
「そっかー、葵ちゃんはおじちゃん好きだもんなあ。」
「うん!大好き。」
「はは、寛も隅に置けないねえ。」
「お、裕次郎!久しぶり!」
「おー、凛君!会いたかったさあ!ちょっとぉ、慰めてよ。」
「どうした?」
「…葵ちゃんに振られた。」
「ぷっ。なんて言われたんだ?」
「私はおじちゃんしか手つながないの、だと。」
「それはそうだ、俺にもそう言うもん。」
「はぁ?なんだよ、どんだけゾッコン?」
「葵だけだな、寛の本当の魅力に気付いてやれる女は。」
「なー。葵ちゃんが姪じゃなきゃ結婚も夢じゃなかったかもしれないのに。」
「おい、わんは結婚しないだけで出来ないんじゃないぞ。」
「はいはい、だったらその理由教えろってーの。」
「…。うし、葵、おじちゃんと手つなぐか?」
「うん!」
「はぐらかすなよなあ。」
「いいやんやー、きっとなんか言いにくい事なんだろ。心に秘めて未だに思い続けてる初恋の人が…とか。ぷっ。」
「ぷははっ、それならしょうがねーやー。」
「…。」
「え、しんけん?」
「なんだよ、それならそうと言えよな。」
「え?おじちゃん好きな人いるの?」
「んー、わんはみんな好きだよ。」
「私も?」
「あたりまえやっし。」
「へへ、うれしいな。」
「えー、寛、俺も?」
「わんも?」
「…あたりまえやっし。」
「「「「ぷはっ、くくくっ。」」」」

結局寛に真相を聞くやつもいなくて、本当のところこいつがどんな気持ちで居るのかは分からない。
だけど俺は、こいつが自分から話してくれるのを待つことにしようと思う。

「あ、葵ちゃん。」
「ん?なあに、裕次郎君。」
「わん、花火持ってきたよ。暗くなったらやろうか?」
「ほんとー?私花火だーい好き。」
「…。」
「何赤くなってんだよ…裕次郎。」
「ああ…やしが、…やっぱ似てる、凛君に。」
「はあ?もう、お前までそんな事言うのかよ。ったく。」
「しょうがねーさぁ。正直凛君ってイキガなのがもったいないくらい綺麗だし。」
「はぁー?お前よくそんな恥ずかしい事本人の前で言えるな。」
「本当の事だし。」
「あっそ、いいからもう行くぞ。」
「あ、パパ真っ赤。へへへっ。」

そそくさと歩き出した俺を見て葵が面白そうに言った。
一瞬何処かでこんな会話したっけな、なんて思ったけどそれは置いておく。
それより沖縄の夏は日が長い。暗くなるのはまだ先だろうってことで皆でアイスを買って、
それから懐かしい場所をぶらぶらしながら時間を潰した。

「あ、なあ、じんじんだってよ。」
「本当だ。」

四人でぶらぶら歩いていると町内の掲示板に貼ってあるポスターに目がとまった。

「ふーん。なあ、葵。」
「ん?なあに、パパ。」
「やーは、…お前は蛍見たことないよな?」
「ん?蛍?うん、見たことない。」
「そっか、じゃあ帰る前に一回見に行こうか?」
「うん!見にいく!」
「うん。」
「おじちゃんも見に行くでしょ?」
「え?ああ、うん、行くよ。」
「裕次郎君は?」
「え?わん?わんは…ほら、奥さんおなか大きいし。」
「ああ、そうか。裕次郎は行けないってさ。」
「そっかぁ、じゃあ三人で行くの?」
「うん。そうだね。」
「…あ、そろそろ暗くなってきたし花火しないか?」
「おー、そうだな。よっし、ひろ君家行くぞ。」

それから4人で一旦寛の実家に戻って、裕次郎の持ってきた花火をした。
葵は楽しそうにしてたけど、線香花火しかなくなると
ばちばちして熱いから嫌だって縁側に座って見てるだけになった。
余すのはもったいないからってことで結局大の男三人で空しく線香花火をする羽目になった。

「なあ、これさ、二本一気に火付けるとちょっと火が大きくなるよな。」
「あー、だな。一個に重なって綺麗だ。」
「でもさ、バランス難しくてすぐ落っこちる。」
「おい、寛。そっちの風が来る方に背向けてやれよ。壁になれ。」
「…これでいいか。」
「おお、サンキュ。」
「あ、ホントだ。風来なくなった。」
「…なにやってんだ?寛。」
「これを…長持ちさせる方法を考えてる。」
「そんなのはさっき考えろよ。見ろ、葵のあの顔。早く終われって顔してるぞ。」
「…やしが、わんは線香花火が一番好きやっし。…他の花火は一つにはなれない。」
「…あ?どうした?まあ、お前はいかにも線香花火派って感じだよな。」
「あー、確かに。ははっ。…あ、落っこちた。ちぇ。」
「あ、じゃあさ、最後の三本誰が一番長く持ってられるか勝負しねえ?」
「えー、そんなのひろ君が勝つにきまってるさぁ。」
「…だな。じゃあ止め。おーい葵、寛が綺麗なの見せてくれるって。」
「なになにー?」
「トリプル線香!」
「なっ、なんでわん?」
「だってお前が一番長くできるだろ?後からの方がぱちぱちして綺麗だし。」
「…。」

そのあと寛は本当にずっと花火の火を灯し続けて、
三つ重なって一つになった火の花は、静かな音を奏でながら綺麗に咲き続けた。

「あ、落ちちゃった。きれいだったね。」
「うん、そうだな。」
「おじちゃん、また花火した時にやってね。」
「ああ、いいぞ。」
「ホント?楽しみにしてるね。」
「おお。」
「…よしっと。それじゃあこれ片付けたらわんはそろそろ帰るよ。」
「おお、ほら葵、裕次郎にお礼言って。」
「裕次郎君、ありがとうございました。」
「どういたしましてー、また来年一緒に花火しようねー。」
「うん!」
「よっし、じゃあまたな。子ども生まれたら連絡する。」
「おう、その前にも連絡くらいしろよ。」
「そうだな、気が向いたら。」
「なんだよ。まあいいや。それじゃまたな。」
「おお、ばいばーい。」
「ばいばーい。」

裕次郎が居なくなった後風呂に入って晩御飯を食べたら、よっぽど疲れていたのか葵はすぐに寝てしまった。
そのあと部屋から出てすぐのところで寛に声をかけられた。

「凛、葵は寝たのか?」
「おお。今日結構はしゃいでたしな。」
「そうか。はい、これ。飲むだろ?」
「おお。サンキュ。」

縁側に座って星を見ながら、寛が持ってきた酒のグラスを傾ける。
やっぱり、海も星も空気も、沖縄が一番きれいだ。

「月がきれいだ。」
「…やーみたいだな。」
「…。」
「もう少し、近くに行ってもいいか。」
「…あ?ああ。」

俺の返事を聞いた後するするとこっちへ移動してきた寛は、
月を見上げたままその手を俺の手にそっと重ねた。
俺はびっくりして何か言おうと思ったけど、やっぱりやめた。
見上げた横顔があまりに不安げだったから。
俺は何も言えずにまた空を見上げる。

「なあ、やーはわんが早く結婚したらいいと思うか?」
「ん?…おお、それはな。」
「どうして?」
「どうしてか?うーん、俺は結婚っていいと思うぞ。お前は子供も好きだろ。
 それに、大切な人が出来て、一生守って行くのってすごいことだと思う。幸せなことだと思うぞ。」
「…一番好きな人の、傍に居られなくても?」
「…寛?どうかしたのか?なにか悩んでるならわんに…。」
「わっさん。ちょっと酔ってるみたいだ。わんはもう寝るから。明日もあるんだし凛も早めに寝とけよ。」
「…。」

寛は昔から無口で自分の思ってる事なんかをベラベラ口に出して言う方ではなかったけど、
それでも俺には何かと相談を持ちかけてきたし秘密だって打ち明けてくれた。
だから俺はいつも寛が自分から言ってくれるのを待っていたし、今だってちゃんと何かを話してくれるって思ってた。
だけどあいつは何か無理した様子でひとり行ってしまった。あんなにつらそうな顔をした寛を見たのは初めてなのに。
なあ、それって俺にも言えないようなことなのか?


back/top/next