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キーンコーンカーンコーン…

ガラガラ

「みんな席につけー。今日は転校来きてんで〜。」

ゴールデンウィークがあけて初めての登校日になった。
あの日はあの後でたこやきを買って帰った。
あの赤髪の男の子も同じ屋台で大量のたこ焼きを買って頬張っていて、
包帯の子はその様子を「もっとゆっくり食べなのどに詰まらせるで〜」とか言いながら
お母さんみたいに微笑みつつ眺めていた。なんとも不思議な光景だった。
だけどあの2人の周りには穏やかな空気が流れていて、
なんだか自分も仲間に入りたくなってくるような、そんな雰囲気があった。

「熊本からきた千歳千里君や。」
「どうも、はじめまして。千歳といいます。大阪は来たばっかでわからないことが多いけん、そんときはよろしく。」

クラスの皆は最初の方こそ千歳の規格外の背の高さや独特の雰囲気に気圧されている様子でちろちろと見ているだけだったけれど、
その後一人の人が話しかけてきたのを皮切りに色んな人が話しかけてくるようになった。
とりあえずクラスに受け入れられて一安心だ。だけど熊本から来た転校生ってことよりも、
実年齢21の大男が普通に中学3年生として馴染めていることのほうが千歳には驚きだった。
15歳かぁ、若いな。
そういえば、あの時の彼らもここにいる生徒たちと同じような制服を着ていたような気がする。

「なぁ、こん学校に白石っておると?」
「え〜?白石?白石なら居んで。1人。」
「知り合いなん?呼んでこようか〜?2組におるけど。」
「いや、自分で行けるばい。ありがとう。」

出来るだけ穏やかな笑みでお礼をいう。心なしか女子の頬が赤くなった気がした。
そのまま教室をでて、隣の教室へ向う。
中を覗くとあの包帯の少年が、窓際の席でなにやら派手な色の頭をした少年と談笑していた。
とりあえず呼びかけてみる。

「白石くーん!おひさしぶりばーい!」

包帯の少年は俺の声に振り返って、驚いた顔をして駆け寄ってきた。

「わ!あの時の!自分中学生やったん?全然わからんかったわ。」
「ははー、よく言われるばい。」
「…転校生って自分のことやったんかー。あ、俺の名前は白石蔵ノ介。
テニス部の部長さしてもらっとる。何か困ったことあったらいつでも声かけてな。」

なんだかとてもきれいな笑顔で言われて、一瞬ドキッとした。

「あ、あぁ、俺は千歳千里、熊本から来たったい。よろしく。」

そこにさっきの派手な髪の少年が割って入ってきた。

「白石―、誰と話してるん? 紹介してや。」
「あー、こっちは熊本から来た千歳君。ほら、一組にめっちゃでかい転校生が来たって女子が噂してたやろ?」
「ああ、確かにめっちゃでかいなー。何食べたらそないにでかくなれるん?」
「馬刺し。」
「…。」
「…。ほんで、こっちが謙也。俺と同じテニス部や。」
「忍足謙也。よろしく。」
「よろしくたのむばい。」
「あ、千歳は前の学校でなんか部活はいってたん?」
「…まあ一応。テニスばやっとった。」
「へー、じゃあ俺らと一緒やな!こっちでもテニスやるやろ?」
「…それはわからんばい。」
「なんでなん?もしかしてめっちゃ弱くて、もうやりたくないとか。」
「謙也。」
「わかっとる。冗談やん。」
「そうったい。その通り。俺はたいが弱いけん、もうテニスはやりたくないと。」
「…。」
「ばってん、見てるのは好きと。やけん、たまに見物さしてくれんね。」

キーンコーン カーンコーン…

始業の鐘がなった。なんだか空気を悪くしてしまったが、
もうテニスをやるつもりがないのは本当の事なので仕方が無い。
自分の教室に戻って席につく。
それからあれこれと考えていたら、あっという間に放課後になっていた。
今日は始業初日なので午前だけで終了らしい。下駄箱で下駄を取り出して履き替える。
それから今日の晩御飯のおかずを買って帰らなければ、
と考えながら門を出ようとしたら誰かに声を掛けられた。

「おーい!馬刺しのにーちゃーん!!」

振り向くとすごい勢いでこちらに向かってくる物体を見つけた。
その物体は俺の目の前まで来て急ブレーキで立ち止まり、にこやかに話しかけてくる。

「にいちゃん、ここの学校の生徒やったんか。びっくりしたわー。今まで全然気付かんかったでー。」
「今日から転校してきたけんね。」
「へー、そうなん?にーちゃんどこからきたん?何年生?名前は?」
「俺は千歳千里。熊本から来た。3年生ばい。」
「わいは1年の遠山金太郎いいますねん!テニス部やでー。よろしゅう!」

それから途中まで彼と一緒に帰って、スーパーの前の分かれ道で別れた。
彼は1年生にしてテニス部のレギュラーらしい。
確かに他の人とは違う独特の雰囲気を持っているが、一年生でレギュラーというのも驚きだ。
…まてよ、遠山金太郎…。どこかで聞いた事のある名前だった。

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